■ヒトでなし 金剛界の章 / 京極夏彦 理屈も倫理も因果も呑み込む。この書は、「ヒトでなし」の「ヒトでなし」による「ヒトでなし」のための経典である――。娘を亡くし、職も失い、妻にも捨てられた。俺は、ヒトでなしなんだそうだ――。そう呟く男のもとに、一人また一人と破綻者たちが吸い寄せられる。金も、暴力も、死も、罪も――。犯罪小説であり思弁小説であり宗教小説であり諧謔小説であり、そしてなにより前代未聞のエンターテインメント小説! 京極夏彦の小説といえば昔は百鬼夜行シリーズや巷説百物語シリーズをよく読んだものだが、ここ暫く新作小説には触れていなかった。まあ、なんとなく似たようなお話ばかりだったから、というのもあったが、こういった作品の主人公というのがどれもなんだか薄ぼんやりとした生気に乏しい唐変木ばかりで、読んでいて苛つかされ読む気が失せていたというのもあった。 というわけでここの所名前も忘れかけ