ブックマーク / huyukiitoichi.hatenadiary.jp (10)

  • 今まで意識したこともなかった領域に言葉で触れる方法を教えてくれる、期待の新進アメリカ作家のSF短篇集──『アメリカへようこそ』 - 基本読書

    アメリカへようこそ (角川書店単行) 作者:マシュー・ベイカー,田内 志文KADOKAWAAmazonこの『アメリカへようこそ』はアメリカの新進作家マシュー・ベイカーの初の短篇集の邦訳である。どうやらアメリカでは「注目すべきストーリーテラー10人」に選ばれるなど注目の作家のようだが僕は聞いたことがなく、SFの短篇集らしいという前情報だけで読み始めたのだけど、これが読んだらたまげてしまった。 扱っている題材はマインドアップロードから犯罪をおかすと記憶を消される世界の男の話まで奇想系まで様々なのだが、とにかくその筆致、語りは誰かに似ているようで似ていない、オリジナルなもので、他で体験できない心地よさが残る。「これまで意識したこともなかった領域に言葉で触れた」とでもいうような短篇群で、その良さがうまく表現できないのだが、だからこそたまげたのだ。単純明快でわかりやすい作品ではないが、その分、文の

    今まで意識したこともなかった領域に言葉で触れる方法を教えてくれる、期待の新進アメリカ作家のSF短篇集──『アメリカへようこそ』 - 基本読書
    quelle-on
    quelle-on 2023/04/11
  • アメリカ最古の辞書出版社における奮闘──『ウェブスター辞書あるいは英語をめぐる冒険』 - 基本読書

    ウェブスター辞書あるいは英語をめぐる冒険 作者:コーリー・スタンパー発売日: 2020/04/13メディア: 単行2019年に、ウェブスター辞書に男や女を二分法で区別しない代名詞の「they」を追加するというニュースが飛び込んできて、日でも少し話題になった。 僕は海外小説をよく読むから、この「they」をどのように日語訳する、されるのかなど気になるトピックスである。そのときにアメリカ最古の辞書であるウェブスターのこと、それが英語辞典としては非常に有名な存在であることも知っていたので、中の人が辞書編纂について書いたこのを見つけた時はすぐに飛びついたわけだ。 で、読んでみたらこれがめちゃくちゃにおもしろい! 日の辞書編纂者のなども読んだことがあるのである程度はこの仕事について知っているつもりでいたが、言語や文化が違えば違うなりの苦労があり、同時にその日々の生活、労力の語りがまたべら

    アメリカ最古の辞書出版社における奮闘──『ウェブスター辞書あるいは英語をめぐる冒険』 - 基本読書
    quelle-on
    quelle-on 2020/05/08
  • 第40回日本SF大賞を受賞した《天冥の標》が2巻まで無料公開されているから全力でオススメする。 - 基本読書

    天冥の標Ⅰ メニー・メニー・シープ(上) 作者:小川 一水発売日: 2013/01/25メディア: Kindle版2020年、第40回の日SF大賞(日SF賞。小説以外の媒体も対象)を小川一水《天冥の標》と酉島伝法『宿借りの星』が受賞した(対象期間は2019年)。どちらも別の角度から現代日SFの豊穣さを示す作品なのだけれども、今この《天冥の標》全10巻のうち、第2巻までが05/06まで各電子書籍サイトで無料になっている。 期間限定の無料でその後読めなくなるケースではなく、一度落としたらその後ずっと読めるはずなので、ぜひすぐには読まなくとも手に入れておいてもらいたい。SFというのは、小説というのは、ここまでのことを描くことができるのか、と打ち震えるような作品だ。全10巻とはいうものの、1巻は上・下巻。6巻は3分冊されているなどして、計17巻の大長篇である。その巻の中にはパンデミックSF

    第40回日本SF大賞を受賞した《天冥の標》が2巻まで無料公開されているから全力でオススメする。 - 基本読書
    quelle-on
    quelle-on 2020/05/05
  • 「スゴ本」を読みたいのであればまずこれを読めと手渡せる、スゴ本の人のスゴ本──『わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる』 - 基本読書

    わたしが知らないスゴは、 きっとあなたが読んでいる 作者:Dain発売日: 2020/04/30メディア: Kindle版スゴの人のスゴが出た。日書評ブログ最大手である「わたしが知らないスゴは、きっとあなたが読んでいる」の書き手Dainさんの初の著書である。Dainというれっきとした名前があるが、やはりスゴの人はスゴの人だろう。それぐらいブログ名と書き手の存在、その姿勢がブログ名と密接に結びついている。だから、当然書名もそのまんま「わたしが知らないスゴは、きっとあなたが読んでいる」だ。 僕は実はDainさんとの付き合いも長く、はてなの企画で一度対談させてもらったりしたこともあってありがたいことに献でいただいたのだけど、家に届けられた直後にいてもたってもいられずに読み始め、最後まで読み切ってしまった。どのページにもその思想、読書術が詰め込まれていて、これまで氏によって語ら

    「スゴ本」を読みたいのであればまずこれを読めと手渡せる、スゴ本の人のスゴ本──『わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる』 - 基本読書
    quelle-on
    quelle-on 2020/05/04
  • 「いま・ここ」で起こっている経済の危機とその対策はなにか!? 緊急出版されたコロナ経済本──『コロナショック・サバイバル 日本経済復興計画』 - 基本読書

    コロナショック・サバイバル 日経済復興計画 (文春e-book) 作者:冨山 和彦発売日: 2020/04/30メディア: Kindle版『なぜローカル経済から日は甦るのか 』や『AI経営で会社は甦る』といった著作、名だたる企業の社外取締役で名をはせている冨山和彦による、コロナショックにぶちあたった日経済についてのである。いくらなんでも刊行が早すぎないか? と思うかもしれないが、そこまでの分量ではなく(文字数的には4〜5万文字ぐらいか?)、4月から4月半ば頃にかけて、1週間でガーッと書き上げられたという。 要するに書き飛ばされたでではあるのだけれども、事態が一週間ごとに急速に移り変わっている現状このスピード感は利点だ。ワクチンがいつできるのか、緊急事態宣言がいつまで続くのか、経済は大丈夫なのか、無数の危機に対して見通しが立っていない暗中の中で経済の行末を考察し、このような状況下に

    「いま・ここ」で起こっている経済の危機とその対策はなにか!? 緊急出版されたコロナ経済本──『コロナショック・サバイバル 日本経済復興計画』 - 基本読書
    quelle-on
    quelle-on 2020/05/01
  • 全人類が同時に記憶障害に陥ったら──『失われた過去と未来の犯罪』 - 基本読書

    失われた過去と未来の犯罪 作者: 小林泰三出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店発売日: 2016/06/02メディア: 単行この商品を含むブログ (4件) を見る 全人類の長期記憶が一斉に不可能になったら 『玩具修理者』や『アリス殺し』の小林泰三さんの新刊だが、これがもう凄すぎて/面白すぎて読み始めてすぐに笑ってしまった。何が凄いって「全人類の長期記憶が一斉に不可能になったら」という無茶苦茶な展開を大真面目に描いていくのだ。 作中ではある日原因不明の事態によって、人類全員が特定の時点から「長期記憶をすることが不可能」に。その結果、それ以前の記憶は普通に保持しているのだがそれ以後のことは10分ぐらいおきに忘れてしまうので、その人の中ではなかったことになってしまう。小林泰三さんは昨年『記憶破断者』という、同じく長期記憶が不可能になった主人公が他人の記憶を勝手に書き換える能力者/殺人

    全人類が同時に記憶障害に陥ったら──『失われた過去と未来の犯罪』 - 基本読書
    quelle-on
    quelle-on 2016/06/11
    壮大すぎる。すごい
  • 過去の科学者に現代の基準でマジレスする──『科学の発見』 - 基本読書

    科学の発見 作者: スティーヴンワインバーグ,大栗博司,Steven Weinberg,赤根洋子出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2016/05/14メディア: 単行この商品を含むブログを見るこれはまたけっこうヘンテコな──というか、あまりないタイプの科学史ノンフィクションである。たとえば──紀元前、デモクリトスやらタレスやらゼノンやらの時代の人々がいっていた「世界を説明する記述」にたいして「もちろんゼノンの論法は間違っている。」とマジレスしながら科学史を辿り直していく一冊なのだ。 間違っていることなんか現代では誰もが知っているのだから(そしてその一部に真実をかすめている部分があればすげーともなるわけだが)それをわざわざ指摘してどうするんだとこっちがマジレスしたくなるが、これが読んでみるとたしかになんでわざわざそんな野暮なことをやらなければならないのかの意味はよくわかる。 どういうこ

    過去の科学者に現代の基準でマジレスする──『科学の発見』 - 基本読書
    quelle-on
    quelle-on 2016/05/17
  • 異質なものとの遭遇──『翻訳問答2 創作のヒミツ』 - 基本読書

    翻訳問答2 創作のヒミツ 作者: 鴻巣友季子出版社/メーカー: 左右社発売日: 2016/01/20メディア: 単行(ソフトカバー)この商品を含むブログを見る鴻巣友季子さんと片岡義男さんの、言わば翻訳の達人二人によって行われた『翻訳問答』に続き、今作では小説家としても活躍する人々五人と鴻巣友季子さんの問答アンソロジーである。登場する人物は奥泉光さん、円城塔さん、角田光代さん、水村美苗さん、星野智幸さんとそうそうたるメンバー。 huyukiitoichi.hatenadiary.jp 前作はプロ同士の解釈のせめぎ合い、技法の交わし合いが面白かった。一方、今作では鴻巣さんがどちらかといえば教授するようなになるのではないかとちょっとだけ心配していたのだが、そのような一方的な展開にはならずに、ちゃんと独特の面白さが出ている。作家ならではの解釈というか葛藤が存在しており、翻訳される作家側の思いが

    異質なものとの遭遇──『翻訳問答2 創作のヒミツ』 - 基本読書
    quelle-on
    quelle-on 2016/01/30
    面白そう。こういうの好き。読んでみたい。「翻訳問答」
  • 抑圧された少女が自分自身を取り戻す"中華風"ファンタジイ──『竜に選ばれし者イオン』 - 基本読書

    "中華風"ファンタジイである。 "中華風"とはつまるところ、実際に中国だったりアジアのどこかだったりを舞台にしているわけではないということだ。その代わりに、その世界観設定に中国や日文化が反映されており、十二頭の竜がおさめる"天竜の帝国"が舞台になっている。 英語圏の人間によって書かれた(著者のアリソン・グッドマンはオーストラリアのメルボルン生まれ)中華風のファンタジイって、実際問題読む前は若干不安だったが……。たとえば、"龍"と"dragon"は、確かに意味的には同一だが、なんかニュアンスというか、雰囲気というか、そういうのが違うのではなかろうかと僕は思うわけである。我らが臥龍先生がCrouching Dragonと説明されると「いや、うーん、まあそうだが……どうだろうか?」となんともいえない気持ちになってくるし。 ただ、書では世界観設定は物語に違和感なく融け込んでおり安心して読める

    抑圧された少女が自分自身を取り戻す"中華風"ファンタジイ──『竜に選ばれし者イオン』 - 基本読書
    quelle-on
    quelle-on 2016/01/26
    竜に選ばれるとかそこ聞いただけでワクワクするし読みたい
  • 我々の日々の半分は地球の暗い部分で過ぎる──『失われた夜の歴史』 - 基本読書

    失われた夜の歴史 作者: ロジャー・イーカーチ,樋口幸子,片柳佐智子,三宅真砂子出版社/メーカー: インターシフト発売日: 2015/01/24メディア: 単行この商品を含むブログ (8件) を見るじっくりと考えてみるまでもなくこの世界において夜は──「半分」を占めている。であればこそ、夜を抜きにして語られた歴史来の歴史の半分しか語られていないといえる。書『失われた夜の歴史』は、産業革命以前の「まだ、明かり(主に蝋燭)がそれほど多数に行き渡らず、高価だった時代」の中世ヨーロッパに焦点をあて、夜に人々がどのように生き、どのような行動が起こり、またどのような考えを抱いていたのかを様々な側面、一次資料から徹底的に洗いだした凄まじい力作である。 夜? 昔の人は寝てたんでしょ、と単純に思うかもしれない。もちろん、今とおなじく大半の人は寝ていた。覆しのようのない真っ暗闇の中で。強制的に執行され

    我々の日々の半分は地球の暗い部分で過ぎる──『失われた夜の歴史』 - 基本読書
    quelle-on
    quelle-on 2015/09/27
  • 1