外耳道癌は稀かつ予後不良な疾患である。その危険因子として過剰な耳かきが臨床上推測されているが,統計学的に検討した報告は少ない。今回,我々は当科で加療を行った外耳道癌患者14例を対象とし年齢,性別,耳かき頻度,耳かきに使用する道具の材質,罹患側,病理組織について検討した。また,本研究に同意を得た健常人69名を対象とし,年齢,性別,耳かき頻度,耳かきに使用する道具の材質について調査し患者群と比較検討した。その結果,50歳未満の若年群における患者群と健常人群間において,有意に耳かき頻度,および硬質素材を用いる率が高かった。今回の結果から,過剰な刺激の耳かきが外耳道癌発生を誘発する可能性が示唆された。
超対称性は現代の素粒子論において非常に重要な対称性であり,素粒子の現象論においても超弦理論においても中心的な役割を果たすと考えられている.この対称性がもたらす最も重要な性質は,場の量子論において現れるある種の量子補正がキャンセルすることである.しかしながら,この性質が一見矛盾を引き起こすことが知られており,アノマリーパズルとして度々議論されてきた.本稿ではこのアノマリーパズルについて解説したい.
西洋スポーツが、暴力性を排除する形で発展してきたのに対し、なぜ日本の学校の体育部活動では、スポーツ選手は理不尽な体罰や暴力的支配を受容して、部活動に順応し続けるのだろうか。本稿の目的は、ブルデュ―の理論と方法を用いて、日本の体育会系ハビトゥスの特徴を、大学生への混合的手法による調査により明らかにすることである。得られた知見は、以下のとおりである。 自分を体育会系だとアイデンティティ自認する大学生は、全体の41.6%で学生の中の一つの大きなカテゴリーである。体育会系ハビトゥスの特徴は、性役割分業の肯定、勝利至上主義、権威主義への賛成傾向、伝統主義と地位の上昇志向である。 体育部活動経験者の多くが、指導者やシニアメンバーから体罰や過度の制裁をうけて、連帯責任で「理不尽な」経験をする。彼らは体育部活の1年目に「理不尽さ」を多く経験し、それを受容することで、権威に従属するハビトゥスを学習する。しか
社会臨床雑誌 第 28 巻第 3 号(2021 年 5 月) -105- 〈論文〉 はじめに 子宮頸癌の原因であるヒ トパピロ-マウイルス(HPV)に対するワクチンの接種事業が大々的に行われて いた時期があったが、接種後に重篤な副反応の疑いのある症状を呈した症例が多発したため、現在は定期 接種の状態は維持したまま接種の積極的勧奨のみが停止された状態になっている。患者(児)の症状・病 態と HPV ワクチンの関係については、専門家の間でも一致が見られておらず論争が続いているが、それが 科学的・医学的論議にならず罵りあいになる場合が多く 、特にインターネッ ト上での SNS を利用する意見 発信の場で、その傾向が強いように見える。本稿はこの論争についての考察である。 1. 事態の発生と推移 子宮頸癌は女性が生涯で罹患する確率が1% 余の疾患であり、現在の日本では毎年約 1 万人が発症し 3,0
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前立腺癌の患者に内分泌療法とともに霊的施療を行い、著しい改善が認められた症例について報告する。患者は67歳で、2003年12月から夜間頻尿、尿勢低下を訴え、2004年5月に受診し、前立腺癌(stage D_2)と診断された。前立腺特異抗原(PSA)は39.01ng/ml、直腸内触診(DRE)において硬く、針生検では中分化-低分化腺癌(Gleason grade 4+5, score 9)であった。さらにCT、MRIにおいても確認され、また骨シンチグラフィーにより左坐骨に異常集積が認められた。6月より内分泌療法を行うとともに7月から5回の霊的施療を行った結果、2005年2月に前立腺癌の縮小と左坐骨を含め骨には異常なしと診断された。
日本において、エビデンスに基づくがん検診がなぜ実現しにくい状況となっているかについて、政治学で発展したアイディア理論を用いて分析を行った。日本のがん検診は世界的に見ても早い時期に導入されたが、その後、死亡率減少のエビデンスがあるがん検診を行うべきという新たなアイディアが海外から輸入され、既存のがん検診を見直す政策変容が進められた。分析の結果、この政策変容が不徹底となっており、エビデンスが確立したがん検診に加え、エビデンスが不十分ながん検診が広く実施されている状況が明らかとなった。 その原因としては、死亡率減少という観点で有効性を評価すべきというアイディアが市町村レベルでは十分受容されていないこと、過去の政策が次の政策選択に影響を与える政策遺産が存在することが挙げられ、政策決定は必ずしもエビデンスのみに基づいて行われるわけではないという現実が浮き彫りとなった。 今後も、他の政策分野を含め、エ
本稿は、戦後日本社会運動史の重要な契機である一九六〇年代学生運動の特徴と意義について、社会運動研究の文化的アプローチに基づき、参加者による運動への意味づけから考察を行なった。一九六八年から一九六九年にかけて東京大学で発生した東大闘争を事例に、参加者への聞き取り調査や一次資料に基づいて分析を行なった結果、次のことが明らかになった。第一に、一九六〇年代学生運動では、新左翼諸党派と〈ノンセクト・ラジカル〉、さらにはそれらと敵対する日本民主青年同盟という、三層の参加者が存在した。第二に、三層の参加者たちは学生運動にたいする意味づけが異なり、とくに運動の目的と運動組織にかんする志向性を大きく異にしていた。一九六〇年代学生運動は、この三者の混在から生じた多元性と、さらには三者間の相克による複雑な動態に特徴づけられていた。第三に、一九六〇年代学生運動の多元性の背景には、一九五〇年代後半以降に起きた、社会
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