文句なし傑作。 ジャンル的にはハードボイルドだが、大人と少年の交感ものとしてジンときたし、ビルドゥングスロマン(成長譚)とも読める。本書はスゴ本オフ@ミステリでやすゆきさんが目ぇウルウルさせながらオススメしてたので読んだんだが、正解ですな。 離婚した両親の間で、養育費の駆け引きの材料に使われている少年がいる。心を閉ざし、ぼーっとテレビを見るだけで、周囲に関心を示そうとしない。私立探偵スペンサーへの最初の依頼は、「父親に誘拐された息子を母親に取り戻す」だったはずだが、放置され、ニグレクトされた少年に積極的に関わろうとする。そのスペンサー流のトレーニングがいい。 「おまえには何もない。何にも関心がない。だからおれはお前の体を鍛える。一番始めやすいことだから」 ときには突き放し、ときには寄り添う。厳しくてあたたかい、という言葉がピッタリだ。これは二色の読み方ができて、かつて少年だった自分という視