すっかり本が読めなくなっている。 忙しいからではない。自己啓発に毒されて仕事に全力を出すのが癖になっているからでもない。 原因は、現代の情報過多だ。 この社会では、どんな商品に出会うときにでも事前の評価がついて回る。本であれば「新刊紹介」などのようなプロのレビューがその代表だ。リアル書店を歩いていて偶然出会う本もあるだろうけれど、それすら「あの作家の最新刊」とか「本屋大賞ノミネート」とか「ネットで100万人が泣いた」とかの周辺情報が、判型の3割、4割を覆うように貼り付けられている。 そうするとこちらも、あらゆる本を色眼鏡で見てしまうようになる。レシピ本ですら「味の素使ったっていいじゃん、美味しいよね」とか「丁寧にひいたお出汁は日本の文化だよね」という強い思想を自分の中に確認しないと手に取れない。 そう、誰が気にするでもないのに、どんな本を開いても、それが事前の情報によって文脈付けられていて
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