「世界三大宗教」といえば、キリスト教、イスラム教、仏教だ。しかしなぜ、この三つが世界に大きく広がったのだろうか。なかでも、日本人にもっとも馴染みのある仏教は、日本以外の国々ではどんな歴史をたどったのだろう――。『仏教の歴史 いかにして世界宗教となったか』(講談社選書メチエ)は、「日本仏教」の枠を超えた〈世界標準〉の仏教史の入門書だ。著者は日本文化の研究で業績を積んだ、フランスの研究者である。 「彼の頭の中は外国語のスーパーマーケットだ!」 「仏教の歴史」というと、昔ながらの仏教学者やお坊さんが書いた、「なんだか古臭い本」とイメージしてしまうかもしれない。しかし、本書は従来の日本の「仏教史」とは全く違っている。第一章の冒頭には、こう書かれている。 〈ユダヤ教であれ、キリスト教であれ、イスラム教であれ、唯一神を中心とした「一神教」の宗教伝統の中だけでずっと生活してきた者にとって、仏教は常軌を外