精神的に追い込む「追い出し部屋」など、さまざまな形で正社員のリストラが進められる中、労働相談の窓口には「辞めさせてもらえない」という相談も急増している。リーマン・ショック後の過度なリストラの反動で、会社は残った社員を囲い込み、過酷な労働を強いる。労使の力関係の差は広がるばかりだ。 (小林由比) 「退職させるつもりはない」。神奈川県内の建築士の男性(49)は上司の言葉に恐怖を感じた。「辞めたい」と申し出たために、寝間着姿のまま会社に連れてこられ、長時間怒鳴られていた若い同僚の姿が頭をよぎった。 経営していた設計事務所の資金繰りが悪化し、昨年十一月に閉めた。 所員二人の就職先を探し、自分も一級建築士の資格が生かせる会社に入った。 だが、すぐに「設計をやる会社の雰囲気じゃない」と感じ始めた。工事の遅れなど客からの苦情が多く、営業担当はそのたびに自分たち設計担当のところに「謝って来い」と怒鳴り込ん