横山秀一(73)は、雪深い北海道紋別市で30年かけて運送業を立ち上げ、牛乳や酪農に必要な農機具、飼料を供給してきた。しかし2022年、彼は有限会社「横山牧場」を手放すことにした。それしか根本的な解決策がなかったのだ。 少子高齢化は、日本でますます当たり前のことになりつつある。経営者の平均年齢は62歳であり、その6割近くが「将来の計画がない」と答えている。 横山は、「もうこれ以上は無理だ」という思いと、「多くの農家に頼りにされているのだから、辞めるわけにはいかない」という思いの狭間で苦しんできた。子供たちも従業員も経営に興味を示さない。それに、この凍てつく北の大地へ移り住みたいと思う人はほとんどいない。