日本は勝った。 ついに野球で世界一になった。 トリノ五輪惨敗間もないだけに(「惨敗味」参照)、一度は決勝トーナメント出場も絶望視されていただけに、選手も国民も感慨無量だったに違いない。 そう。平成十八年(2006)三月に開催された、第一回WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)のことである。 野球はロンドン五輪より正式種目からはずされた。 「このままでは野球が廃ってしまう」 WBCはその代わりとして始まった大会である。 「記念の第一回大会はなんとしても勝たなければならない」 日本はソフトバンクの王貞治(おうさだはる)監督に大命を託し、最強チームを結成した。 一次予選リーグを前に、日本の牽引車(けんいんしゃ)・イチローは豪語した。 「相手が向こう三十年勝てないなって感じで勝ちたい」 これには韓国がカチンときた。 「日本め、何するものぞ!」 ただでさえ日本戦には闘志むき出しの韓国である。