「この出生届は間違っています」 逃亡生活の後、A子さんは親戚の紹介で営業事務の仕事につき、ひっそりと新生活を始めた。表札を偽名にするなど、Bの追跡をかわす工夫を凝らしながら、息をひそめるようにして子供を育てた。 追ってきたBといつ出くわすかわからない恐怖から、わが子と外で遊ぶこともままらなかった。幸いなことに、近くにスーパーなど生活インフラは整っていたため、それほど遠出をする必要がなかったのが救いだったという。 そんな時、Aさんは子供好きの男性Cさんと知り合った。 ふたりは交際に発展し、長女を授かった。無事出産したA子さんだが、出生届を出そうと最寄りの区役所を訪れた時、衝撃を受けた。 窓口の職員が「この子のお父さんはBさんですね。この届出は間違ってます」と言い、定規と赤ペンで書き直そうとしたのだ。A子さんは「勝手に書かないで下さい」と咄嗟に制止したが、当初はわけがわからなかったという。 そ