ある時から「忖度」という言葉は悪しきもの、忌むべきものとして用いられるようになった。しかし、本来は「他者の心情を推し量り、配慮する」ことを指す。それはさまざまな人と関わりながら仕事をし、生活を営む我々の社会においては大事な素養の一つであり、程度の差はあれ、多くの人が何かしらの忖度をしながらそれぞれのコミュニティを立ち回っているのではないだろうか。 今回お話を伺うのは、銀座のクラブ「稲葉」のオーナーママである白坂亜紀さん。その仕事は、まさに忖度の連続だ。稲葉のような高級クラブを訪れる遊び慣れた大人は、単なる酒宴の場を超えた付加価値を期待している。また、大事な契約がかかる接待では、ママやホステスにも客のビジネスを適切にアシストする役割が求められる。細やかな心配りなくしては、とても務まらない世界である。 大学生でこの道に入り、約30年。ホステスにとってのメジャーリーグと呼ばれる銀座で選ばれ続けて