楽園とは探偵の不在なり 作者:斜線堂 有紀発売日: 2020/08/20メディア: Kindle版本書は、メディアワークス文庫から『キネマ探偵カレイドミステリー』でデビューした斜線堂有紀による、二人以上の人間を殺すと天使によって地獄に引き摺りこまれるようになった世界の連続殺人事件を描き出す、特殊設定ミステリの長篇である。 特殊設定ミステリは大好物だが、本作の場合は単なる事件とその解決に関連した特殊設定というだけでなく、導入によって社会構造自体が大きく変わる「世界全体に波及するタイプの特殊設定」で、一番好きな部類だ。なので、そのへんをどう描き出してくれるのか、あるいはあまり描き出さないのかと戦々恐々としながら読み始めたのだけど、いやーこれが期待通りの逸品! きちんとこの事象が発生することによって社会がどのように変化したのかを描き出し、なおかつそうした社会構造の変容それ自体が、事件やテーマ部分