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ブックマーク / huyukiitoichi.hatenadiary.jp (88)

  • 人間は、どこまで遠くを見れるのか。『法治の獣』著者がおくる、傑作宇宙探査SF──『一億年のテレスコープ』 - 基本読書

    一億年のテレスコープ 作者:春暮 康一早川書房Amazonこの『一億年のテレスコープ』は、早川のSFコンテスト(第七回)で優秀賞を受賞、受賞後に刊行されたSF中篇集『法治の獣』は年間ガイドの『SFが読みたい!』で国内篇の一位を獲得と、順調にその実力を証明してきた作家・春暮康一の最新長篇だ。 著者のデビュー作(『オーラリメイカー』)は、天の川銀河に属する文明群が正体不明の星系改造種族に迫る、質実剛健というか手触りの良い中篇であった。続く中篇集の『法治の獣』には、シンプルに驚かされた。ウェルメイドを突き抜け、圧倒的な個性と視点で、地球外生命体SFやファーストコンタクトもののあらたな地平を切り開いていく気概が感じられた。先日刊行されたアンソロジー『地球へのSF』所収の「竜は災いに棲みつく」は、同アンソロジーの中でも突出した広義の気候変動ものだった。 ようするに、著者は新作を読めば読むほど驚くよう

    人間は、どこまで遠くを見れるのか。『法治の獣』著者がおくる、傑作宇宙探査SF──『一億年のテレスコープ』 - 基本読書
  • 既存の「わかりやすい」人類史を現代の知識・研究でとらえなおす、『ブルシット・ジョブ』著者の遺作となった大作ノンフィクション──『万物の黎明 人類史を根本からくつがえす』 - 基本読書

    万物の黎明 人類史を根からくつがえす (翻訳) 作者:デヴィッド・グレーバー,デヴィッド・ウェングロウ光文社Amazonこの『万物の黎明』は、世の中にはやってもやらなくてもいいようなクソどうでもいい仕事で溢れているのではないかと論を展開した『ブルシット・ジョブ』で知られるデヴィッド・グレーバーの最新作にして、遺作となった大作ノンフィクションである(単著ではなく、考古学の専門家デヴィッド・ウェングロウとの共著)。今回テーマになっているのは、サブタイトルに入っているように、「人類史」だ。 多くの(特に売れている)人類史には、環境要因に注目したジャレド・ダイアモンド『銃・病原菌・鉄』や「虚構」をテーマにしたユヴァル・ノア・ハラリの『サピエンス全史』のように「わかりやすい切り口」が存在するものだが、書(『万物の黎明』)の特徴の一つは、数多語られてきた「わかりやすい切り口」の「ビッグ・ヒストリ

    既存の「わかりやすい」人類史を現代の知識・研究でとらえなおす、『ブルシット・ジョブ』著者の遺作となった大作ノンフィクション──『万物の黎明 人類史を根本からくつがえす』 - 基本読書
  • 仕事が行き渡らない世界がやってきたら、我々はどうやって生きていけばいいのか?──『WORLD WITHOUT WORK――AI時代の新「大きな政府」論』 - 基本読書

    WORLD WITHOUT WORK――AI時代の新「大きな政府」論 作者:ダニエル・サスキンドみすず書房Amazon近年、AIなどのテクノロジーの進歩は、人間から仕事を奪う。いや歴史が証明しているようにテクノロジーの進歩は新しい仕事を作り出すから人は新しい仕事へと移るだけだ。その移行には数十年かかるから現代を生きる我々の救いにはならない! など、さまざまな「テクノロジーの進歩と仕事」についての主張が交わされてきた。 数十年に渡るそうした論争の末、近年のノンフィクションでは、「多かれ少なかれテクノロジーの進歩は人間の仕事を奪う」方向に傾いているように思う。たしかにこれまで多くの仕事は、自動車やトラクターが馬を(少なくとも移動の手段としては)不要としたように、テクノロジーの進歩によって消え、また新たな仕事を作り出してきた。だが、それはいうても新しいテクノロジーが結局人間の完全な代替にはならな

    仕事が行き渡らない世界がやってきたら、我々はどうやって生きていけばいいのか?──『WORLD WITHOUT WORK――AI時代の新「大きな政府」論』 - 基本読書
    reqanui
    reqanui 2022/03/17
    ドクトロウの小説『マジック・キングダムで落ちぶれて』は、働かなくても生きていけるBI以降の社会で、世のため人のために働くようように人々の行動や生きる目的を誘導する評価経済社会が描かれてて面白かったなあ。
  • 資本主義以外の選択肢を模索する、経済学者・政治家によるSF経済書──『クソったれ資本主義が倒れたあとの、もう一つの世界』 - 基本読書

    クソったれ資主義が倒れたあとの、もう一つの世界 作者:ヤニス・バルファキス講談社Amazonこの『クソったれ資主義が倒れたあとの、もう一つの世界』は、『父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。』などで知られる経済学者にして政治家のヤニス・バルファキスによる、資主義に代わる制度についての提言を記した書というか、SF経済書というかといった感じの一冊である。 体裁としては完全にSF小説で、物語で中心になる時代は2025年と現代よりも少し先の未来。中心人物であるギリシャに住むコスタは、ユーザーの欲望を読み取り、それを擬似的に(脳内で)体験させる装置であるHALPEVAMと呼ばれるシステムを構築する過程で、偶然にも平行世界の自分と通信を確立することに成功し、自分(同名の人物でややこしくなるので、作中ではコスティ)とのやりとりを開始することになる。 で、このコスティ

    資本主義以外の選択肢を模索する、経済学者・政治家によるSF経済書──『クソったれ資本主義が倒れたあとの、もう一つの世界』 - 基本読書
    reqanui
    reqanui 2022/01/05
    コリイ・ドクトロウのSF小説『マジック・キングダムで落ちぶれて』(2003)でも経済の仕組みは似たような感じだったなあ。労働だけでなく生活の全てが他人からの評価で決まる評価経済社会なのでもっと極端だったけど。
  • 手遅れになる前に考えうる危険性を事前に把握しこれに対処する『ロボット法──AIとヒトの共生にむけて』 - 基本読書

    ロボット法--AIとヒトの共生にむけて 作者: 平野晋出版社/メーカー: 弘文堂発売日: 2017/11/20メディア: 単行この商品を含むブログを見る人工知能の発展著しい昨今であるが、法はまだその状況に追いついていないというのが実際のところだ。一番わかりやすいところでいうと、人が関与していない自動運転車が人を轢き殺した時に、誰が、どのような法解釈のもと責任を負うのかだろうか。 運転していたAIなのか、製造元なのか、はたまた自動運転車の所有者なのか。人は運転していないのだから製造元なのではと思うかもしれないが、どれほどAIが発展したとしても、必ず事故は起きる。そうなった時に無条件に製造元に責任が問われるのであれば、誰もそんなものは売らないはずだ。したがって発展(AIに任せたほうが事故は減り、生産性が向上するといった利益を仮定した場合)もないことになる。 ロボット法における中心的な懸念点

    手遅れになる前に考えうる危険性を事前に把握しこれに対処する『ロボット法──AIとヒトの共生にむけて』 - 基本読書
    reqanui
    reqanui 2021/11/14
    同時期に出たウゴ・パガロ『ロボット法』が序盤からアクセル全開だったのに対してこっちは割と親切で読みやすい。あと安い。
  • 人間とロボットの相互作用における責任の条件──『ロボット法』 - 基本読書

    ロボット法 作者: ウゴパガロ,Ugo Pagallo,新保史生,松尾剛行,工藤郁子,赤坂亮太出版社/メーカー: 勁草書房発売日: 2018/01/30メディア: 単行この商品を含むブログ (2件) を見る最近『ロボット法』関連のが出はじめ、刊行予定にも並び始めたのだけれども、書はその中でも、ロボット技術の現在と、今後起こりえる技術発展を見据えて実定法上の問題を27に分類し、一つ一つそこにどのような問題があるのか、法制度は今のまま、既存の法を延長することで新たな状況に対応することができるのか。不可能なのであればそれはなぜなのか、といったことを丹念に解き明かしていく一冊である。 書の目的は法的に1つの正しい答えというものが手の届くところにあるのか、法制度が代替的解決を受け入れ可能か、または政治的決定が行われる必要があるかを決定することである。典型的な実例は軍事ロボット分野における自律

    人間とロボットの相互作用における責任の条件──『ロボット法』 - 基本読書
    reqanui
    reqanui 2021/11/12
    やたら込み入った議論まで取り上げてるので読むのに苦労した。
  • 意識せずとも必要な情報を伝えてくれる穏やかなデザインへ──『カーム・テクノロジー 生活に溶け込む情報技術のデザイン』 - 基本読書

    カーム・テクノロジー 生活に溶け込む情報技術のデザイン 作者:アンバー・ケース(Amber Case)発売日: 2020/07/14メディア: 単行現在、生活していく上で身の回りには欠かせない電子機器・パソコン・スマホアプリケーションで溢れている。web会議をするためにはDiscord、zoomといったツールが、チャットツールとしてはSlackがあり、パソコン外の家にも大量の電子機器が存在している。さらには、洗濯機や冷蔵庫、時計に掃除機などあらゆるものがインターネットに繋がって、そのすべてが我々に何らかの情報を伝えたがっている。 数が多いので、我々はそのすべてを注視しているわけにはいかない。そいつらが何かを知らせたい時に全員がピーヒャラピーヒャラ大きな音を立てたらこちらもブチ切れざるを得ないだろう。機械には限界がないかもしれないが、人間の注意力には限界があるからだ。では、どうすればいいの

    意識せずとも必要な情報を伝えてくれる穏やかなデザインへ──『カーム・テクノロジー 生活に溶け込む情報技術のデザイン』 - 基本読書
  • 最先端物理理論の提唱者が語る、時間の実態──『時間は存在しない』 - 基本読書

    時間は存在しない 作者: カルロ・ロヴェッリ,冨永星出版社/メーカー: NHK出版発売日: 2019/08/29メディア: 単行(ソフトカバー)この商品を含むブログを見る時間は存在しない、といきなり言われても、いやそうは言ったってこうやって呼吸をしている間にもカチッカチッカチッと時計の針は動いているんだから──とつい否定したくなるが、これを言っているのは、一般相対性理論と量子力学を統合する、量子重力理論の専門家である、職のちゃんとした(念押し)理論物理学者なのである。 名をカルロ・ロヴェッリ。彼が提唱者の一人である「ループ量子重力理論」の解説をした『すごい物理学講義』は日でもよく売れているようだが、書はそのループ量子重力理論から必然的に導き出せる帰結から、「時間は存在しない」ということをわかりやすく語る、時間についての一冊である。マハーバーラタやブッタ、シェイクスピア、『オイディプ

    最先端物理理論の提唱者が語る、時間の実態──『時間は存在しない』 - 基本読書
    reqanui
    reqanui 2021/02/27
    『時間は、元来方向があるわけではなく一直線でもなく、さらにいえばアインシュタインが研究したなめらかで曲がった幾何学のなかで生じるわけでもない。』ベイリーの時間衝突みたいだ
  • 認知科学の観点からいえる、最強の英語学習法──『英語独習法』 - 基本読書

    英語独習法 (岩波新書 新赤版 1860) 作者:今井 むつみ発売日: 2020/12/19メディア: 新書この『英語独習法』は、認知科学や発達心理学を専門とする今井むつみによる、認知科学の観点から考えた最強の英語学習について書かれた一冊である。『「わかりやすく教えれば、教えた内容が学び手の脳に移植されて定着する」という考えは幻想であることは認知心理学の常識なのである。』といったり、多読がそこまで良くはない理由を解説したり、一般的に良しとされる学習法から離れたやり方を語っている。 特徴としては、「何が合理的な学習方法なのか」を披露するだけではなく、「なぜそれが合理的なのか」という根拠を説明しているところにある。だから、これを読んだらなぜ一般的な英単語の学習法(たとえば、英単語と日語の意味を両方セットで暗記していく)が成果を上げないのか、その理屈がわかるはずだ。認知科学のバックボーンから出

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  • 10年代SF傑作選から『サハリン島』まで、多数の傑作SFが刊行されたてんこ盛りな2020年を振り返る - 基本読書

    アンソロジーが記憶に残った年 今年を振り返って記憶に残ったのは、やはり10年という区切りの年だったこともあってか優れたアンソロジーが多数刊行されたこと。たとえば、『なめらかな世界と、その敵』の伴名練が編者に入った『2010年代SF傑作選1・2』(大森望・伴名練編)は野崎まどの笑撃作「第五の地平」から小川一水による数学SFの傑作「アリスマ王の愛した魔物」、ベテランから新鋭まで幅広く取り揃えたアンソロジーだ。 2010年代海外SF傑作選 (ハヤカワ文庫SF) 作者:ピーター トライアス,郝 景芳,アナリー ニューイッツ,ピーター ワッツ,サム・J ミラー,チャールズ ユウ,ケン リュウ,陳 楸帆,チャイナ ミエヴィル,カリン ティドベック,テッド チャン発売日: 2020/12/17メディア: 文庫今年は海外編も前回の年代別傑作選から十八年ぶりに『2000年代海外SF傑作選』、『2010年代海

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  • キリの悪い所でやめるメソッド - 基本読書

    小ネタ。よく学習法で「一日たったの五分でOK!」みたいな謳い文句で売り込んでくるケースが見受けられるが、あれは信用ならない。なぜなら何においても「はじめる」のが非常に億劫なのであって、一度はじめてしまえば五分なんていわずに二十分でも三十分でもできるものである。そういう経験がだれにでもあるのではないだろうか。 五分でOKなのか! と喜び勇んでやってみてもその五分の壁が厚い。その壁さえ乗り越えてしまえばあとはすいすいできる。なぜはじめるのだけがやたらと難しいのか理由はわからない。はじめるとやる気成分が出てくるみたいな話をどっかで読んだような気もする。だから問題は一日に何分でOKというその時間の短さではなく、いかにして始めるかだ。 MORI LOG ACADEMYという作家の森博嗣さんの著作の中で「キリの悪いやめ方を心がける」というメソッドが出てくる。これがなかなか素晴らしいメソッドで、もう長い

    キリの悪い所でやめるメソッド - 基本読書
    reqanui
    reqanui 2021/01/10
    やる気を出すための踏み台を用意しておくのね
  • ロボット法と関連するロボット/アンドロイドSFを紹介する - 基本読書

    ロボット法 作者: ウゴパガロ,Ugo Pagallo,新保史生,松尾剛行,工藤郁子,赤坂亮太出版社/メーカー: 勁草書房発売日: 2018/01/30メディア: 単行この商品を含むブログ (2件) を見るノンフィクションとSF(を筆頭とした作品)を同時に読んだらおもしろいじゃろう、といつも思っているので、その二つを並列的に紹介する試みをやろう。現実の物理事象がネタ元になっているハードSFを宇宙物理学系のと合わせて紹介してもおもしろいだろうし、ドローン/遺伝子/脳科学/AIと、小説と関連して話を膨らませられる題材も多い……ということで初回は最近盛り上がっている”ロボット”である。 ロボット法については近著で手頃なノンフィクションが二冊あるのでそれを中心にして紹介するとして、一言ロボットといってもそこには無数の広がりがあって、全側面を取り上げることはできないのでまず最初に超古典的な作品、

    ロボット法と関連するロボット/アンドロイドSFを紹介する - 基本読書
    reqanui
    reqanui 2021/01/03
    ロボット法(パガロ)読んだ後にロボット法(平野)を読むとだいぶ読みやすい!と感じる。 その2冊を読んだ後にBEATLESSを読み返すと「これロボット法でやったところだ!」ってのが色々発見できて面白い。免責の条件とか
  • 罪を犯した人間をただ投獄するのは、正しいか──『囚われし者たちの国──世界の刑務所に正義を訪ねて』 - 基本読書

    囚われし者たちの国──世界の刑務所に正義を訪ねて 作者:バズ・ドライシンガー発売日: 2020/12/25メディア: 単行(ソフトカバー)この『囚われし者たちの国』は、刑事司法教育を教える大学ジョン・ジェイ・カレッジ・オブ・クリミナル・ジャスティスの女性教授であるバズ・ドライシンガーが9カ国の刑務所をまわって、今あるべき刑務所、許し、罪と罰の関係性について思考をめぐらせるルポタージュである。日にいると法律に違反したら(執行猶予はあるけど)投獄されて自由を制限されるのは当たり前でしょ、と思うが、世界を見渡してみると刑務所も罪の償い方も千差万別であり、何が正しいのかわからなくなってしまう。 書の著者は、出発点はアメリカの刑務所の実態のひどさから、刑務所についての疑問がスタートしている。アメリカが世界人口で占める割合は5%弱なのに、囚人が収容されている人数は230万人、世界の25%に達する

    罪を犯した人間をただ投獄するのは、正しいか──『囚われし者たちの国──世界の刑務所に正義を訪ねて』 - 基本読書
  • 『この世界が消えたあとの科学文明のつくりかた』をダシにして文明再興SFを語る - 基本読書

    この世界が消えたあとの 科学文明のつくりかた 作者: ルイスダートネル,Lewis Dartnell,東郷えりか出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2015/06/16メディア: 単行この商品を含むブログ (1件) を見る先週末HONZに文明が一旦崩壊したあと、いかにして文明をリスタートさせるのかをテーマにして書かれた『この世界が消えたあとの科学文明のつくりかた』の記事を書いたらこれがけっこう読まれていたみたいだ。honz.jp アクセス数とかはわからないけど※この記事を書いた後でアクセス数を見れるようにしてもらえました。 なんかブックマークコメントやTwitterの言及がいっぱいついていた(Twitterの方はみてないけど)。やれ異世界転生物で使えそうだとか、SFでこんなものがあるとか。僕もこの記事を書きながら自分のブログだったらSFへの言及がマシマシになって収拾がつかなくなって

    『この世界が消えたあとの科学文明のつくりかた』をダシにして文明再興SFを語る - 基本読書
    reqanui
    reqanui 2020/12/23
    仁木稔の《ヒストリア》シリーズはラテンアメリカとか中央アジアとかそれぞれの地域の文化に根差した独自の文明の再興を描いてたなあ
  • 自由と尊厳を超えて - 基本読書

    山形浩生さんが訳しておられたので読んでみた。1971年の古典といっていいのかどうかわからない微妙な時代に出されたものの、再訳となるらしい。著者のB・F・スキナーは行動心理学の開祖ということで、そうした前提情報を何も知らずに読み始めたのがこれがなかなかの快著だ。考え方の根底が原理的で、さまざまな問題に応用することができる発想を中にためこんでいる。 スキナーが書で繰り返し語るのは、行動の原因を自律的な内なる人──心に求めるのをやめて、実際に起こっていること、つまり行動と環境との関係を直接見るべきであるといったことだ。性的行為への処罰は性的なふるまいを変える。人が苦しむとしたらそれは内的な感情から苦しんでいるのではなく事故や犯罪や戦争仕事がうまくいかないとか怒られるかもしれないとか、そうした周囲の環境の副産物として起こる。『生じるかもしれない感情は何であれ、せいぜいが副産物でしかない。』 こ

    自由と尊厳を超えて - 基本読書
    reqanui
    reqanui 2020/12/16
    『生じるかもしれない感情は何であれ、せいぜいが副産物でしかない。』見方が逆転的だ。
  • データからみたジェンダー・ギャップ、無償労働に医療に軍隊にトイレまで──『存在しない女たち:男性優位の世界にひそむ見せかけのファクトを暴く』 - 基本読書

    存在しない女たち: 男性優位の世界にひそむ見せかけのファクトを暴く 作者:キャロライン・クリアド=ペレス発売日: 2020/11/27メディア: 単行この『存在しない女たち』は、英国のジャーナリストでフェミニスト活動家として知られるキャロライン・クリアド=ペレスによる、ジェンダー・ギャップを徹底的にデータでみて、あらゆる領域で解き明かしていこう、という一冊である。ようはフェミニズムなのだけれども、これが大変におもしろいし、重要な視点を提供してくれるだ。男女平等と一言でいっても、男女は身体的にも環境的にも異なる存在であり、同じように割り当てればそれで済む話ではない。たとえばトイレの広さとか。 であれば、何をどうすればより公正になるのか。というより、お互いの負担を減らすことができるのか。それを知るためには、まずデータを見て判断し、データが足りないのであれば、そのデータを集めるように働きか

    データからみたジェンダー・ギャップ、無償労働に医療に軍隊にトイレまで──『存在しない女たち:男性優位の世界にひそむ見せかけのファクトを暴く』 - 基本読書
  • ゾンビが跳梁跋扈する世界で発生する密室殺人──『わざわざゾンビを殺す人間なんていない。』 - 基本読書

    わざわざゾンビを殺す人間なんていない。 作者: 小林泰三,YKBX出版社/メーカー: 一迅社発売日: 2017/06/30メディア: 単行(ソフトカバー)この商品を含むブログを見る「全人類の長期記憶が一斉に不可能になったら」という展開を大真面目に描く『失われた過去と未来の犯罪』。複数世界にまたがって展開するミステリ『クララ殺し』など、「よくそんな設定思いついたな」や「設定を思いついたとしてもよく書こうと思ったな/よく書ききったな」とただ驚愕してしまう作品を昔から連発している小林泰三さんの最新刊は、死んだ哺乳類(人間含む)がゾンビになる世界、ゾンビが当たり前になった世界で起こった密室殺人事件を描くゾンビ・ミステリーだ。 世界観を紹介 ゾンビと一言でいってもいろいろなバリエーションがあるので、世界観含め軽く紹介していこう。まず書のゾンビは、死者が生き返るタイプのもので、噛みつかれた上で"死

    ゾンビが跳梁跋扈する世界で発生する密室殺人──『わざわざゾンビを殺す人間なんていない。』 - 基本読書
    reqanui
    reqanui 2020/12/07
    ゾンビと共存する新しい生活様式
  • 金融から感染症、格差まで、すべては人の繋がり・ネットワークが関係している──『ヒューマン・ネットワーク 人づきあいの経済学』 - 基本読書

    ヒューマン・ネットワーク 人づきあいの経済学 作者:マシュー O ジャクソン発売日: 2020/11/19メディア: Kindle版2020年はひときわネットワークが意識される年だった。インターネットのことではなくて、人と人とのネットワークの話だ。人付き合いが多く、より多く事に出かける人ほど新型コロナウィルスに感染する可能性が高くなる。この言葉にしてみるとあたりまえすぎる事実が、まざまざと証明され続ける一年だったといえるだろう。 というわけでこの『ヒューマン・ネットワーク』はそうした一見当たり前にみえる人と人との繋がり、ネットワークを科学していこう、という一冊である。たとえば、より多くの人と飲みに行けば感染症にかかりやすいのは当然だが、そのリスクは人付き合いの数にたいして、どのように増えていくのか。我々は文化的、教育的、職業的に似たもの同士で集まりやすい傾向を持っているが、これが社会にど

    金融から感染症、格差まで、すべては人の繋がり・ネットワークが関係している──『ヒューマン・ネットワーク 人づきあいの経済学』 - 基本読書
  • わたしたちの世界は、わたしたち自身だ──『生まれながらのサイボーグ: 心・テクノロジー・知能の未来』 by :アンディ・クラーク - 基本読書

    生まれながらのサイボーグ: 心・テクノロジー・知能の未来 (現代哲学への招待 Great Works) 作者: アンディ・クラーク,呉羽真,久木田水生,西尾香苗出版社/メーカー: 春秋社発売日: 2015/07/24メディア: 単行この商品を含むブログ (1件) を見る書名でまず惹きつけられ、表紙デザインの素晴らしさにがっとやられてしまうが実をいうとSF的ななんかあれのではない。「サイボーグ」といえばまず真っ先に、義体が当たり前になった近未来世界を描く攻殻機動隊シリーズや、そのままずばりタイトルに入っている石ノ森章太郎原作の『サイボーグ009』シリーズに代表されるイメージを思い浮かべる人が多いかもしれない。その特徴を一つ上げるならば、生身の人間ではなく一部だったり全体だったりが機械の身体に置き換わっていることだろう。 書が提示するサイボーグ観 ところが書が提示するサイボーグ観はアニ

    わたしたちの世界は、わたしたち自身だ──『生まれながらのサイボーグ: 心・テクノロジー・知能の未来』 by :アンディ・クラーク - 基本読書
    reqanui
    reqanui 2020/11/21
    "人体と道具と環境の総体" としての人間
  • 空間認知の心理学・神経科学的基盤から、漫画の中の空間論まで──『Mind in Motion:身体動作と空間が思考をつくる』 - 基本読書

    Mind in Motion:身体動作と空間が思考をつくる 作者:バーバラ・トヴェルスキー森北出版Amazon意識、思考といったものは、我々の頭の中だけで作られるものではなく、空間と身体動作と意識の相互作用・統合によって形作られていくものである。たとえば、極端なことをいえば人間の赤ん坊は自分の手や足といった体が自分のものであることを理解していない。手を自分で、意識的に動かしているとは気づいていない。 親が指を近づけると、最初赤ん坊は握るが、それは反射的なものであって、見えなくなると追いかけない。だが、次第に手と意識が統合されていき、離れていく指やガラガラを自分の意志で追えるようになる。そのあたりは地味で基的な部分だけれども、「身体動作」と「空間」と「思考」の関係は広い領域に広がっている。 たとえば、我々は地元であれば大抵、道端で駅はどこだとか市役所はどこだとか聞かれれば、その場を起点にし

    空間認知の心理学・神経科学的基盤から、漫画の中の空間論まで──『Mind in Motion:身体動作と空間が思考をつくる』 - 基本読書
    reqanui
    reqanui 2020/11/14
    現代のSNSなんかは時系列的に上が新しくて、下が古いってのは最初混乱したなとふと思い出した。