エイリアンハンド症候群の研究から見えてきた脳の作用 ダービー(Ryan Darby)は神経科の医学実習生だったころ「エイリアンハンド症候群」という症状を聞き知ってはいたが,実際に患者を診察すると,その行動はまるで不可解でしかなかった。患者は四肢の1つ(手であることが多い)が勝手に動くように感じるという。その手はものに触ったりつかんだり,他方の手がとめたシャツのボタンをはずすこともできる。ところが患者はこの勝手に動く手を制御できず,物をつかむのをやめさせることも,動きを止めることもできないのだ。 患者はまるで「行為の主体性」を失っているようだ。自分が自分の動きを支配しているという間違いようのない感覚,自由意思の重要な構成要素が失われている。「エイリアンハンド症候群は,心とは何であって,より大きな概念を心がどのようにしてもたらすのかという疑問を投げかける疾患の1つだった」と,現在バンダービルト