タグ

ブックマーク / daen.hatenablog.jp (3)

  • 究極の経済学小説――グレッグ・イーガン「しあわせの理由」 - 誰が得するんだよこの書評

    経済学では、財は、その使用によってなんらかの効用 utilityを得るための手段です。ここでいう効用とは、快楽であり、幸福であり、欲望の満足です。経済学は財の効率的な分配を研究していますが、それは結局のところ、僕たちが効用を効率的に得るための道具なのです。 そこでこういう疑問が出てきます。では、なぜ効用そのものが直接、売買されないのだろうか。なぜ、しあわせは商品化されないのだろうか。 作は、脳内の物理的状態を変更できるナノマシンによって、しあわせが、いとも容易く得られる世界を描いています。この技術の衝撃はすさまじく、既存の価値観はことごとく破壊され、生きる理由でさえも、どこにも見出せなくなりそうな絶望に襲われます。いや、その絶望ですらも、無意味にしてしまいます。パラメータをちょっといじっただけで完全に消えてしまう程度の絶望なら、はたして絶望と言えるのでしょうか。まあ、同じことは希望にさえ

    究極の経済学小説――グレッグ・イーガン「しあわせの理由」 - 誰が得するんだよこの書評
  • 時間的無限大 / スティーヴン・バクスター - 誰が得するんだよこの書評

    スティーヴン・バクスターで一番面白い。ワームホールを利用したタイムトンネルを通して未来から、未来人と宇宙人がやってくる話。と書くとなんとも幼稚なプロットに聞こえますが、とんでもない。ハードSF的な肉付けが半端じゃなく、茫漠としたスケールのデカさを前にして思わず感動しました。作中で登場するタイムマシンは原理的に可能です。この「エキゾチックな負の物質」と「負のエネルギー」を利用したタイムマシンは、物理学者キップ・ソーンによって考案されました。「負のエネルギー」自体はカシミール効果によって存在が実証されてすらいます。とはいえ、量が不足すぎてタイムマシンを作るのは現実的に無理だそうです。 また、メインアイディアのひとつに「ウィグナーの友人」という思考実験が使われています。これが抜群に面白い。《ウィグナーの友人》と名乗るカルト教団が出てくるんですが、彼らの突飛な思想と行動は一理ありますよ。*1 まあ

  • 不死は実現可能!?― 猫でもわかる塵理論 - 誰が得するんだよこの書評

    グレッグ・イーガン「順列都市」の解説。当然のごとくネタバレです。難解と評判な「塵理論」に挑みます。なにぶん学生なもんで、間違っている箇所が多々あるかと思います。そんなときは容赦なくコメント・トラックバックで批判してください。 長すぎて読めないという方は、8.総括だけでもどうぞ。 1.無限の意味 全ての可能な文字列。全てのはその中に含まれている。 円城塔「Self-Reference ENGINE」の冒頭部分です。実はこれ、円周率のことをさしています。円周率は、現在1兆桁を超える桁数まで計算されており、今のところ0〜9の数字がランダムに現れているように見えます。この状態がこの先の桁でも続くかどうかは分かりませんが、無限に続くランダムな数字の羅列であるとみていいでしょう。無限に続くランダムな数列は、事実上ありとあらゆる数列を含んでいることになります。例えるなら、0〜9の数字が書かれたサイコロ

    不死は実現可能!?― 猫でもわかる塵理論 - 誰が得するんだよこの書評
  • 1