9月7日に起きた中国漁船と海上保安庁巡視船との「衝突事件」は、日中間の大きな外交問題に発展しつつある。この間の日中両国政府の動きを詳しく追っていたら、ふと、日中間で厳しい軋轢が生じた小泉純一郎政権時代のことを思い出した。 当時、筆者は在北京・日本大使館で広報を担当していたので、記憶は今も鮮明だ。今回は、誤解や批判を恐れず、こうした個人的体験に基づき、この事件を巡る日中当局間のやりとりを改めて検証してみたい。 日中外交について学んだこと
その第1は、7月30日に予定していた「2010年防衛白書」の閣議了承を9月に延期したことである。 仙谷由人官房長官は延期の理由として、「韓国の哨戒艦沈没事件に関する国連の動きや、防衛大綱見直しの報告書などを新たに記載すること」などを挙げたと報じられている。 沈没と言うと事故によって沈んだというニュアンスを感じてしまう。日本政府として適切な語彙を使ったと言えるのだろうか。爆沈あるいは撃沈と沈没原因を明確にした文言を使用すべきであろうと思料する。 (閑話休題) 読売新聞によれば、「政府関係者によると、本当の理由は、韓国側への配慮だとされる。防衛白書は例年、竹島を『我が国固有の領土』と明記している。今年は、8月29日に日韓併合条約発効100年を迎えたこともあり、反日感情を刺激したくなかったという」。 これが事実ならば、由々しき事態である。自民党政権時代よりもさらに弱腰になっているのではないかと危
7月23日、ハノイで開かれたASEAN地域フォーラム(ARF)でクリントン国務長官が、南シナ海領有に関する中国側の主張を完膚なきまで論破したからだ。 先週の欧米・東南アジアの新聞は、「米対中政策の転換」「ベトナムの大勝利」などと大騒ぎだった。ところが、例によって日本のマスコミは、一部を除き、ARFでも北朝鮮関連報道にしか関心を示さない。実に情けない話ではないか。 今回は「また海の話か」と叱られるのを覚悟で、南シナ海の話を書かせていただく。今やこの問題は米中海軍のレベルを超え、米中両国間の戦略的対立に発展しつつある可能性があるからだ。まずは事実関係のおさらいから始めよう。 国務長官の爆弾発言 クリントン米国務長官は7月23日、ARF会合後の記者会見で、米側の発言内容につき概ね次のとおり述べた。ちょっと長いが、内容は極めて重要なので、そのポイントを要約してみたい。 (1)他国と同様、南シナ海に
いよいよゴールデンウイーク(GW)が近づいてきた。間の平日に休暇を取って7連休、11連休の大型休暇を計画している人も多いことだろう。しかし、国民にすっかり定着したGWが、もしかしたら2011年で姿を消すかもしれない。 1月5日付「2010年を有休休暇完全取得元年に」の中でリポートした政府の「休日分散化」構想が、3月に具体的に示された。その中身は、全国を5ブロックに分け、地域ごとに春休みと秋休みを設け、観光振興や内需拡大につなげようというもので、まさに賛否両論だ。 しかし、わざわざ国民の祝日をいじらなくても、サラリーマンが有給休暇を完全取得するよう企業に義務付ければ同じ効果が見込まれるのではないか。 連休分散化案のねらい 2010年3月、政府の観光立国推進本部が打ち出したのは “連休分散化案” だった。 まず現在の「国民の休日」の一部を、行楽シーズンの春と秋に振り替える。つまり、「憲法記念日
「9.11」と言えば恐らく誰でも知っている。ニューヨークの世界貿易センタービルがテロリストにより乗っ取られた航空機の自爆により炎上・瓦解したことを含む米国における同時多発テロの生起した日である。 同時多発テロ事件後アフガニスタンで勢力を持つアルカイダが犯行声明を出し、米国政府は、手段も場所も相手も選ばないテロ集団掃討のため軍隊をアフガニスタンに派遣した。 陸上での行動と呼応して、アフガニスタンでのテロ集団を支援するテロリストの移動や武器弾薬・麻薬等の関連物資の海上輸送を阻止するための海上行動も開始された。 米国は国際社会に参加を呼びかけ、わが国もテロ行為は国際秩序を乱すものであり、わが国自体への犯行の恐れもあることから海上阻止作戦を支援することとし、2001年11月、第1陣が出港、12月から支援活動を開始した。 以来本年1月まで、途中法律の期限切れによる中断があったが、国会手続き及び任務の
鳩山由紀夫氏の野望がとてもスケールの大きなものであることは誰も疑いようがない。今年8月の総選挙で民主党が歴史的な大勝利を収め、初めての所信表明演説に臨んだ首相は、東アジアをリードする民主主義国であり世界第2位の経済規模を誇る日本を大きく変革したいとぶち上げた。 日本の政界では指折りの名家の出身である鳩山首相は、満員の衆議院本会議場で次のように語りかけた。鳩山内閣が取り組むのは、封建制度を廃し、近代日本の基礎を築いた1868年の明治維新に匹敵する変革である。 「今日の維新は、官僚依存から、国民への大政奉還であり、中央集権から地域・現場主権へ、島国から開かれた海洋国家への、国の形の変革の試みです」 首相は単に大風呂敷を広げたわけではない。民主党の地滑り的な大勝利により、半世紀にわたってほとんど破られることのなかった自民党支配は明らかに崩れ去った。数を大幅に減らした自民党議員は首相を不機嫌そうに
日中関係も中日関係も、その9割は内政だ。政治局常務委員クラスの訪日ともなれば、その失敗は中国の内政上問題となり得る。だから、この種の訪問ではあまり冒険はできない。むしろ、日程が何事もなく、予定通り、スムーズにいけば「大成功」となる。 江沢民元主席が訪日して以降、今回ほどギクシャクした中国要人訪日はあまり覚えがない。習副主席に同行していた中国側随員の顔色も心なしか蒼ざめて見えた。こんなはずではなかった、というのが日中関係者双方の本音だろう。 何でこうなったのか。「日本側の事情」はおびただしい報道のおかげで大体分かったが、中国側は「日本政府に聞いてくれ」の一点張りで、あとは黙して語らないそうだ。恐らく、中国関係者がこの点につき詳しい説明を行うことはないだろう。 そうであれば仕方がない。 勝手ながら今回は、「大成功」に終わるはずだった中国国家副主席訪日に「ケチ」がついた「中国側の事情」を解き明か
問題は乱暴者、狼藉者の如くに言われ、とっとと出て行けと言われる普天間の海兵隊(マリーン)である。あれは邪魔者なのか。 居なくていいのか。少し減るのはやむを得ないのだとしても、居てくれないと困る。 「尖閣列島に中国が攻めてきたら日米安全保障条約が発動され、米軍は来てくれるんでしょうね」――なんてことを、とかく日本は米国に確かめたがる。 しかも自分では尖閣に物理的プレゼンスを置くでなし、何もしないでいて、なおかつしつこく確かめたがるのだけれども、指呼の間、在沖海兵隊を根こそぎ居なくしたりしてでもいたら、それこそ中国さん、いらっしゃーいと言ってるようなもの。「へそ茶」の議論だ。 マリーンは日米をつなぐ血の紐帯 もう1つの考え方は、彼らマリーンを日米をつなぐ血の紐帯とみることだ。若い米国人のblood poolが沖縄にあり、日本の各所にある。これくらい、米国が日本防衛に示した堅いコミットメントの証
2020年に1990年比25%の温室効果ガス削減を達成すること自体、まず実現困難な数字だ。民主党はマニフェストに掲げた通り、いずれ環境税の導入に踏み切るだろうが、日本のエネルギー価格は元々、国際的に高水準にある。 一方で、世界にはノルウェーやオーストラリアのように電気代が非常に安い国がある。 かつて、電気代の高コストに耐えきれずに海外に生産拠点を移転した業界がある。アルミ精錬業である。 アルミニウムは「電気の缶詰」と揶揄されるほど精錬工程で膨大な電気を消費する。1970年代の2度の石油ショックで電力コストが上昇すると、日本のアルミ精錬メーカーはみるみる国際競争力を失い、生き残りのため国内の工場を閉鎖し、地金の生産が安い国に精錬工場を移していったのである。 25%削減達成のためエネルギー価格を引き上げたり、各業界に削減割り当てを設定したりすることになれば、恐らく、温室効果ガス排出量の多い鉄鋼
外交上、とんでもないことが連続で起きている 「鳩山民主党政権とは、何者か。それは恐らく、空想的平和主義の傾向を持つ左派・リベラル思想の持ち主が政権の中枢を陣取り、それを真正左翼の社民党が政権内で左へ左へ傾かせる性格を持った政権だと言えよう」 「彼らが口にする『対等な日米関係』とは、左派・リベラル思想の見地から戦後日本の歩みを塗り替えることを意味しているのであり、だからこそ、日米関係がかつてないほどの危機に瀕しているのだ。私たちは、とんでもない政権を誕生させてしまったことになる」 我々が今、目の前で見せつけられている出来事は、まさに「とんでもない」ことの連続である。それは日本の将来にどんなマイナスのインパクトを与えるだろうか。今日と明日の2回に分けて検証してみる。 まず普天間問題である。 米海兵隊普天間飛行場の移設問題について、鳩山政権が年内決着を見送ったことは周知の通りだ。米国務省のトナー
免疫学の世界的権威である安保徹・新潟大学大学院教授である。「何たるムダ。効果もほとんど期待できないワクチンに、なぜこれほどの税金を投入するのか。愚の骨頂である」と手厳しい。 最終的には接種を受ける人の負担になるが、国や市町村でもかなりな額の補助が行われる見通しだ。安保教授は続けて言う。 「ワクチンなんて歴史的に効いたためしはほとんどありません。弱めたウイルスを使ってワクチンを作っているわけで、本物の抗体ができないのです。今までにワクチンを打った人で、その後インフルエンザにかからずに済んだという例は1つもありません」 もっとも、安保教授は効果がゼロと言っているのではない。効果はあっても極めて限定的であり、それに頼り切るのはいかがなものかと言うのである。医療の世界はただの水でも効果がある場合がある。人間には本来備わっている強い自己治癒力がある。精神的な効果でそれを高められれば、それ自体が治療で
核兵器をゼロにするという構想が次第に現実味を帯びてくると、ならず者国家の指導者だったらこう考えると思う。 「あ、じゃ、最後まで核を持ってて『え? 皆さんもう捨てちゃったんですか、ボクまだ持ってますけど』って言えるようになろう」 核削減のゲームだと、最後の1発を持った者が強い。平壌などにそんなことをさせないため査察の態勢をうんと強めるにせよ、岩盤深くえぐった地底にぶ厚いコンクリートで隠していたりしたら、ほんとに目が行き届く、ないし、査察できるのだろうか。 矛盾だらけの核廃絶論議
2008年の金融破綻以後、世界的に基礎研究予算の減額、研究体制の引き締めが進んでいる。だが、基礎研究とは予算がなければできないものなのだろうか? ここ日本に「研究費がないから仕事ができない」などという言い訳をすべて打ち消してしまうような素粒子実験物理学者がいる。丹生潔博士。名古屋大学理学部名誉教授で、1971年、世界で初めてチャーム・メソンと呼ばれる既存の理論では説明がつかない新粒子を発見した。 丹生実験は素粒子理論全体の世代交代を余儀なくさせる歴史的な大成果だった。それが当時の金額で200万円ほどの予算で成し遂げられたものなのだ。 しかも、丹生実験の発見が最終的に背中を押す形になって、当時はまだ20代だった小林誠氏、益川敏英氏の2人の理論家が新しい理論的枠組みの構築に着手することになった。もちろん、小林、益川両氏とは、昨年(2008年)ノーベル物理学賞を受けた方々である。 巨大実験ブーム
4月20日、大阪市内で唯一の総合周産期母子医療センターである愛染橋病院(大阪市浪速区)に、様々なメディアの記者が集まりました。 愛染橋病院の60代の副院長が過去に、飲酒後にお産に立ち会ったということが判明して、院長が謝罪会見を開いたのです。 「飲酒した状態で診察した」という部分だけを見ると「不届きな医師がいてけしからん」と思われるかもしれません。しかし謝罪会見の質疑応答から、副院長は正規の当直の際に飲酒していたわけではないことが分かりました。 出産や緊急手術など人手が必要な事態はいつ発生するか分かりません。もちろん、当直医師が若手であったり非常勤医師であった場合にも発生します。そうした時に、非番で少しお酒を飲んでいた副院長が善意のボランティアとして病院に来て、お産を手伝ったりしていたということなのでしょう。医療現場ではよくある話です。 もちろん「病院に来て仕事をする以上はお酒が入った状態で
元来は科学技術庁の外郭機関だった社会技術研究開発センターは「アジア・テロリズム」に関する国際研究会議を組織している。初回はインドネシアのバリ島で開かれ、その後毎年、会場を移して各地で開かれている。 初めてこの会議に招かれた時、私は「どのようにしてテロリストを養成するか(How to make a terrorist? )」という、ややセンセーショナルなタイトルで講演を行い、かなりの反響を得ることができた。 テロリストの養成は意外に簡単 日本ではとりわけ、霊感商法で知られる新興宗教「統一教会」、そして「オウム真理教」からの脱会を中心に、カルト宗教からの離脱とその支援活動の歴史が続いている。 カルトの犯罪手口を慎重に観察すると「テロリスト」を養成するのが、いかに簡単であるかが、よく分かる。 ちょっとした心理的なつまづきを経験した青年をつかまえて、洗練されたマインドコントロールを施すと、相当な比
2002年9月中旬、米国の首都ワシントンが1年中で最も快適な季節を迎える中、「第3回日米CSOフォーラム」が開かれていた。しかし、日米双方の参加者の苛立ちが、爽やかな初秋の空気を切り刻んでしまった。 CSOとは、市民社会活動団体(Civil Society Organization)の略。非営利の市民団体はNGOやNPOとも言うが、国際的な会議ではCSOと呼ばれることが多い。このフォーラムには、日米両国の国際的なCSOから、そうそうたる代表が参加していた。 お互いの「苛立ち」の中身を説明しよう。当時、ブッシュ前政権によるイラク開戦(実際は2003年3月)を控え、日米CSOのお互いに対する期待は噛み合わなくなっていた。 日本のCSO関係者の多くには、「どの国のCSOでもCSOである以上、反戦・反政府であるはず」との思い込みがある。例えば、日本のあるCSO代表は東京の本部から、「イラク開戦反対
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