「特に誰かのアイデアをもとにするのでない、手作業によって考察の多くの部分は進められた。書かれることは特に何かの『思想』に依拠していない。ひとまず必要がなかったからだ。それに何かを引合いに出せば、それとの異同を確かめる必要がある。そのためには相手の言っていることを知らなくてはならない。注釈が増えてしまうだろう。かえって面倒なことになる。そういう作業はきっと必要なのだろうし、それを行うことによってきっと私も得るものがあるのだろうとは思うが、相手から何かを受け取るためにも、まずは私が考えられることを詰めておこうと思った」(iv頁)。 それでいながら、すぐに本書を読んだわけではない。何分にも、相当の大著(文献表を含めると約五〇〇頁)であるし、扱われているトピックも、医療倫理・生殖技術・優生学・障害者運動・生命倫理等々といったもので、私自身の専門からあまりにも遠く、すぐは手が出せそうにないと感じた。