執筆者 白井 洋一 1955年生まれ。信州大学農学部修士課程修了後、害虫防除や遺伝子組換え作物の環境影響評価に従事。2011年退職し現在フリー 農と食の周辺情報 白井 洋一 2012年5月9日 水曜日 キーワード:環境 農薬 有機農業は農薬や化学肥料を使わないので、農地や河川の汚染が少なく、環境への負荷を減らす持続可能な理想的農業だという考え方がある。一方で、農薬を使わなければ病害虫の被害も増えるだろうし、肥料が十分ないと収穫量も確保できない。世界の人口は2050年には90億人に達すると予測されているが、有機農業で世界の食料をまかなえるのかと批判的、懐疑的な見方をする人も多い。 今年(2012年)3月と4月に、有機農業と慣行農業で栽培したときの収穫量を比較した研究事例を大量に集め、包括的に分析(メタ分析)した論文が2つ発表された。慣行農業(Conventional Agriculture)
食品中の残留農薬により健康を損なうおそれがないよう、次のような方法で、農薬の残留基準を設定しています。 食品中の農薬の残留基準値は、農薬を定められた使用方法で使用した際の残留濃度等に基づき設定しています。コーデックス委員会(※)が定める国際基準があるものについては、国際基準も参照します。 こうして設定した残留基準値については、農薬が残留する食品を長期間にわたり摂取した場合や、農薬が高濃度に残留する食品を短期間に大量に摂取した場合であっても、人の健康を損なうおそれがないことを確認しています。 具体的には、我が国における各食品の摂取量を勘案して、食品を通じた農薬の摂取量が、 ・毎日一生涯にわたって摂取し続けても健康への悪影響がないと推定される一日当たりの摂取量 (ADI:許容一日摂取量) ・24時間又はそれより短時間の間に摂取しても健康への悪影響がないと推定される量(ARfD:急性参照用量)
トレハロースは熱など様々な条件に最も安定な糖だが、精製にコストがかかっていたため、使用は化粧品などに限られていた。その後、デンプンから安価に精製する方法が開発され(最初は1kgが700ドルしたのが、現在では3ドルで精製できる)、多くの食品に添加されるようになって現在に至っている。もともと、多くの自然にある植物に含まれていることから、最も安全な糖として広く使われるようになった。 今日紹介するテキサスベーラー大学からの論文は、確かに食品としてトレハロースが危険というわけではないが、病原性の高いクロストリジウムの病原性を高める役割を果たしていることを示した、ちょっと恐ろしい研究で、Natureオンライン版に掲載された。タイトルは「Doetary trehalose enhances virulence of epidemic clostridium difficile(流行性のクロストリディウム
どんなコラム? 職業は科学ライターだけど、毎日お買い物をし、家族の食事を作る生活者、消費者でもあります。多角的な視点で食の課題に迫ります プロフィール 京都大学大学院農学研究科修士課程修了後、新聞記者勤務10年を経て2000年からフリーランスの科学ライターとして活動 ひさしぶりに農水省の広報誌「aff」(あふ)を見た。あんまり面白いとは言えない雑誌なので、時たましか見ない。そして、5月号 に仰天した。農水省は、多くの生産者を貶めて、思い込みの情報、科学的には間違った情報を拡散している、と私には思えた。税金を使ってどうしてこんな広報をするの? 皆さんはどう思われるだろうか? ●食の安全と外食の原産地表示、関係ある? たとえばP10。こう書かれている。 90年代〜2000年代初頭にかけて発生したBSE問題や、2002年に発生した輸入農作物の残留農薬問題、2000年代以降相次ぐ食品偽装問題など、
国立医薬品食品衛生研究所は、食品安全情報(化学物質)No.24(2016.11.22)を発表した。 注目記事 【FTC】FTCはOTCホメオパシー医薬品の宣伝に関する執行政策方針を発表 米国連邦取引委員会(FTC)は、「OTCホメオパシー医薬品の宣伝に関する執行政策方針(Enforcement Policy Statement on Marketing Claims for Over-the-Counter(OTC)Homeopathic Drugs)」を発表した。その中でFTCは、OTCホメオパシー医薬品の有効性と安全性の宣伝について他の市販薬と同等の基準を設けるとしている。従って、販売業者は、製品が主張している内容の裏付けとなる十分な信頼できる科学的根拠を持たなければならない。 ※ポイント:興味深いのは、FTCがOTCホメオパシー医薬品について、販売業者は症状の治療に効果があると宣伝し
■雑誌の記事やドラッグストアでも目にする酵素このところ健康関連の情報に「酵素」という文字をよく見かけます。先日、ドラッグストアに入ったところ、酵素が摂れることをうたったサプリメントを紹介するコーナーが作られていて、現代人では不足しがちな栄養素である酵素という大きなPOP付きの宣伝がされておりました。また、雑誌などをめくると「朝の生ジュースでたっぷり酵素をとりましょう」、「加工食品の摂り過ぎで酵素不足になる」というような酵素を特集した記事も目にすることが増えているように思います。 これだけ酵素が推されていると、いままで酵素のことを気にしたことがなかった人でも、もしかすると私も酵素不足かも?と心配になってしまうかも知れません。 今回は、酵素は食べないと不足するのか、そもそも酵素って何なの?という基本的な疑問について簡単に説明してみようと思います。 ■酵素は栄養素?酵素というものはありとあらゆる
寒くなってくると、恋しくなる食べ物のひとつが「おでん」ですね。コートの襟を立て、手なんぞこすりながら、おでん屋の暖簾をくぐる時は、それだけでなんだかホッとしてしまいます。外は寒くても暖かい店に入ると、まずはビールをオーダーしたくなります。しかし、やはりおでんに合うのは燗酒だと思います。それも熱燗に限ります。そこでビールの後は、早々に「熱燗、お願い」とオーダーするわけです。 おでんは店によっても随分と味が違いますし、地方によってもそれぞれです。東京、大阪、そして福岡にも、その地方独特のおでんがあり、それぞれおいしいです。愛知・名古屋には、味噌仕立てのおでんがあり、京都は昆布だしが利いた薄味の店が多いです。筆者が自信を持っておすすめできるおでん店は、京都の「蛸長」と、松山の「赤丹」です。お値段もそれなりで、食べて飲んで最低でも一人5000円程度にはなります。しかし、それは当然といえば当然。食材
国内製パン市場で4割のシェアを誇る山崎製パン(東京都千代田区)。食パンの「ダブルソフト」やサンドイッチの「ランチパック」などおなじみの商品は多いが、ネット上で「ヤマザキパンは大量の添加物を使っているから常温でもカビが生えない」「発がん性物質の臭素酸カリウムを使っている」などの批判も見かける。確かに、手作りパンはすぐカビるのに、ヤマザキパンはカビにくい。その理由は-。(平沢裕子) 添加物使用を疑問視 カビにくいなどとヤマザキパンがネット上でやり玉に挙がるのは、平成20年に出版された『ヤマザキパンはなぜカビないか』(緑風出版)に端を発する。同書は、国内のパンメーカーの中でヤマザキパンだけが「臭素酸カリウム」を使っていることを問題視し、他社に比べてヤマザキパンがカビにくいのは臭素酸カリウムの使用と関係している可能性があるなどと指摘している。 臭素酸カリウムは、小麦粉処理剤として日本で使用が認めら
日々、人に伝えるのが難しいなぁと思っていることがあります。 今日講義で、焼き肉や焼き魚のコゲに含まれる発がん物質の話をしました。どんな化合物の物質が生成していて、どんな生理的作用があってという話がメインですが、補足として、人はどのぐらい食品からその発がん物質を摂取していて、実験動物で発がんするにはどのぐらいの量が必要かを具体的な数字で説明しました。 実際、焼き肉のコゲを今の100倍ぐらい毎日食べても、発がんするかしないかのレベルですよと伝えたつもりですが、講義後に毎回書いてもらっている質問・コメント票には、「発がん物質→怖い」という脊髄反射的コメントがいくつかありました。 毒性と量の関係の説明は、伝わらない人には本当に伝わりません。有害物質がほんのちょっとでも入っているとを聞くと、量のことは全く考えず拒絶する人が少なからずいます。とにかくリクスを避けたいという心境は分からないことはないので
【台北=田中靖人】台湾当局が東京電力福島第1原発事故後に導入した日本の食品に対する輸入規制を強化する問題で、日台双方の窓口機関による協議が13日、台北市内で行われた。関係者によると協議は物別れに終わり、15日から日本からの食品輸入が全て停止することが確実になった。 協議には、日本側から農林水産省や経済産業省の課長級も出席した。台湾は震災以降、福島など5県の食品の輸入を禁じており、(1)日本から出荷される全ての食品に都道府県別の産地証明(2)東京都や静岡県など特定地域の水産品、茶類、乳幼児食品など3分類800品目超の「高リスク産品」に放射線検査証明−の添付をそれぞれ求めている。 台湾側は今年4月16日、規制強化を一方的に発表。日本側は「科学的根拠に欠ける」として撤回を求めていた。 13日の協議でも、台湾は日本側にこうした対応を改めて要求。日本側は実施の延期を求めたが、台湾側は応じなかっ
どんなコラム? 職業は科学ライターだけど、毎日お買い物をし、家族の食事を作る生活者、消費者でもあります。多角的な視点で食の課題に迫ります プロフィール 京都大学大学院農学研究科修士課程修了後、新聞記者勤務10年を経て2000年からフリーランスの科学ライターとして活動 朝日新聞に妙な記事が出ました。無添加にこだわり19年 杉並のパン屋が閉店という見出しです。 自家製酵母が自慢のパン店が閉店。添加物を入れたパンで湿疹ができた経験を経て、無添加パンのベーカリーコンサルタントに。国内外に400店近くを開き、さらに19年前に東京・杉並に自分の店をオープン。福島原発事故後は、「原材料の安全性が保てない」と休業し、再開後は原材料の放射性物質の検査をしていたという。店を閉めた後は体調を整え、コンサルタント業を再開する——というのが記事のおおまかな中身です。 変だなあ、と思うことは二つあります。まずは、この
「食」の安全性をめぐる話題は、高濃度放射能汚染食品からジャンクフードまで実に様々ある。いま世の中で「これは危険」と見なされている食や、食の含有物は、本当に危険なのだろうか。危険だとすればどのくらい危険なのだろうか。 このような疑問を、毎回テーマごとに食の専門家にぶつけてみて、「食と安全を巡る本当のところ」を、前後篇で伝えていきたい。 第1弾として取り上げるのが「食品添加物」だ。法律では「食品の製造の過程において又は食品の加工若しくは保存の目的で、食品に添加、混和、浸潤その他の方法によって使用するもの」(食品衛生法)と定義されている。 コンビニエンスストアなどの食品の成分表示に並ぶ、保存料、甘味料、着色料などの文字。「食品添加物」というと「極力、避けるべきもの」と捉えられがちだ。 では、いま食品に使われている食品添加物を私たちが体に摂り込むと、本当に人体に影響があるのだろうか。 そんな疑問を
どんなコラム? 職業は科学ライターだけど、毎日お買い物をし、家族の食事を作る生活者、消費者でもあります。多角的な視点で食の課題に迫ります プロフィール 京都大学大学院農学研究科修士課程修了後、新聞記者勤務10年を経て2000年からフリーランスの科学ライターとして活動 食品中に含まれる化学物質アクリルアミドの発がん性について、毎日新聞が10月4日、記事を出した。リテラというサイトでも、取り上げられている。 だが、これらの記事、いろいろと問題があるように思う。アクリルアミドについては、参考にすべき信頼できるサイトがさまざまあるので、それらを紹介しながら解説したい。 毎日新聞は、食品安全委員会の化学物質・汚染物質専門調査会に設置されている化学物質部会第6回会合の内容を基に報じている。同部会は、昨年1月からアクリルアミドの評価を続けており、第6回会合も継続審議となった。 会合で検討された評価書案は
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