前回は、グローバル・イルミネーションやサブサーフェース・スキャタリングといったCGレンダリングの分野で最もシミュレーション的要素を多く含む手法の研究開発と、これらの手法がどのように映画や市販ツールなどの産業分野に浸透しつつあるかを紹介した。CGの研究分野では年を追うごとに、このようなシミュレーション的要素を多く含む手法の数が増えてきている。それらのなかでも、とりわけ産業と密接な関わりをもって発展してきているのが、流体シミュレーションだといえる。 流体シミュレーションとは、流体力学をベースにして(より正確にはナビエ・ストークスの方程式:Navier-Stokes Equationを解いて)水・煙・霧などといった流体の挙動を視覚化することを目的にしたものだ。CG流体シミュレーションのルーツは、CFD(数値流体力学:Computational Fluid Dynamics)とよばれる学術分野にあ