「わび・さび・幽玄」は、日本文化のエッセンスだと考えられている。和歌、能、茶道、俳諧などを通じて、こうした伝統的な美意識が形成されてきたと私たちは思いがちだ。しかし、これらの言葉が日本の美意識を示す3点セットになっていくのは、東京五輪や大阪万博の時期になってからのことだ。日本美のクリシェ(常套句、じょうとうく)はどのようにして生まれたのか。 海外の日本文化研究者に「日本美の本質とは何か」と問われることがよくある。そんな時、日本の伝統文化を貫く美意識を伝える便利な言葉がある。「わび・さび・幽玄」である。もっと別の要素があることは十分に承知しているのだが、そう答えると自分でも妙に納得してしまう。まるで魔法のような言葉だ。それでいて、「わび」と「さび」はどう違うのか、「幽玄」とは何かと問われると、途端に困ってしまうのだ。 それにしても、「わび・さび・幽玄」こそが「日本的なるもの」と考えられるよう
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