旅が好きだからといって、いつも旅ばかりしているわけにはいかない。多くの人は、人生の時間の大半を地元での地道な日常生活に費やしているはず。私もその一人だ。が、少し異なるのは、夕方近くにはほぼ毎日、その地域で昔から続く銭湯(一般公衆浴場)ののれんをくぐることだろうか。この習慣は地元でも旅先でも変わらない。昔ながらの銭湯の客は、地域の常連さんがほとんど。近場であれ旅先であれ、知らない人たちのコミュニティーへよそ者として、しかも裸でお邪魔することは、けっこうな非日常体験であり、ひとつの旅なのだ。 【動画】小さいけれど東京式銭湯の味わいを濃厚圧縮した浴室。富士山ペンキ絵は中島盛夫絵師によるもの 神奈川宿描いた広重「台之景」、坂の漁村はここか 歌川広重の「東海道五十三次」には日本のメインロードを旅するワクワク感がぎっしり詰まっているが、今やその風景が失われている場所が多い。なかでも神奈川宿を描いた「台