閉ざされた集団の観念が,抑えのきかない凄惨な暴力をよび起こした.1960年代末,過熱する学生運動の中から誕生した赤軍派.本書は,同志粛清,あさま山荘へと突き進んでいったこの党派を社会学的に分析した秀作である.彼らはなぜ粛清という恐怖の淵に落ちたのか.信ずる思想はなぜ死へのイデオロギーと化したのか――. 欺瞞的民主主義への対抗措置は,武装闘争しかありえないと信じた左翼理念は,残忍性と革新性の両立を図った時点で,暴力の排除に向かう国際合意とは距離を置かざるを得ず,大義の理解という活動の根幹を批判される.帝政ローマ記の著述家フラウィウス・ヨセフス(Flavius Josephus)は,紀元1世紀,ゼロット(熱心党員)というユダヤ人組織に所属するグループの殺戮行為を評して「殺戮そのものよりも恐怖を喚起させる混乱」が彼らの目的である,と看破していた.左翼革命運動家による反戦運動は,西側諸国で1960