【はじめに】 アメリカの精神医療における脱入院化の大きな転機は、1963年の「精神病及び精神薄弱に関する大統領教書」(Special Message to the Congress on Mental Illness and Mental Retardationいわゆる「ケネディ教書」)である。精神障害者の置かれている現状を批判し、地域でのケアを謳ったことが評価されているが、その教書を転機に始まった「脱入院化」にたいしては、退院後の地域支援策のなさへの批判が主である。 地域ケアへの移行に関していうと、教書の出された1963年以前に、精神衛生運動などの動きがすでにある。また、脱入院政策後の地域ケアの無さを原因とした問題は指摘されてはいるが、その対応についての言及は多くはない。 本発表では、1963年以前の出来事に関して少しふれ、「ケネディ教書」の成立過程と問題点を、教書を受けての「脱入院」施