1997-98年のアジア通貨・金融危機により、中国は金融危機が国家にもたらす深刻な影響を身近に感じることができた。中国がそれから逃れることができたのは、資本勘定が自由化されておらず、国際資本からの衝撃が小さかったためである。現在でも、中国では通貨危機あるいは大規模な銀行破綻、支払危機といった事態は発生していない。しかしながら中国では金融危機勃発の可能性がない、というわけではない。こうしたリスクを解消するために、不良債権の処理をはじめ、国有商業銀行の改革を急がなければならない。 1)金融システムの市場化の鍵となる国有銀行改革国有商業銀行は、中国の銀行システムにおいて重要な地位を占めているため、その経営状況は中国の金融システムの安定性を直接左右する。中国の金融システムの安定性を確保するには、まず国有商業銀行の問題点を解決しなければならない。中国のWTO加盟時の公約に基づけば、2006年までに外