「こいつらには、敵わない。勝ったはずなのに、負けた」と思った。6年前、NYに来た時には、あんなに欲しかった世界一の座。それなのに「そんなもの、どうでもいい」と思わせる何かが、そこにはあった。 2012年2月、日本人バーテンダーの後閑信吾は、「Bacardi Legacy Cocktail Competition 2012 (バカルディ世界レガシーカクテルコンペテション)」の決勝の舞台にいた。地域予選、国予選、世界大会準決勝を勝ち抜いた世界トップの8人が、世界一の座をかけて、その腕を競う大会だ。 地域予選、国予選、世界大会準決勝 7分間でカクテルをつくりながら、プレゼンテーションをして、審査員にサーブするというのが、審査の内容だ。世界大会の決勝というだけあって、集まったのは、すべてにおいて素晴らしいバーテンダーばかりだった。 そんなライバルたちと戦ううえでの、後閑の弱点は、英語と人前で話すこ