『ヒューマン2.0 web新時代の働き方(かもしれない)』(朝日新書)を10年前に上梓し、未来の働き方を予見した筆者が特別寄稿。日本人に送る、15年後の私たちの世界とは? サンフランシスコ発の飛行機がパリに着いてベルト着用のサインが消えると、人々は立ち上がってオーバーヘッドビンから荷物を降ろし始めた。通路の乗客が動き始めたところで香里奈も立ち上がる。ドアまでは5列ほどだからすぐ降りられるだろう。立ち上がった人々の背中の間からドアを出て行く乗客が見える。 長時間のフライトの疲れが見える横顔を見るともなしに眺めていると、突然、夫の顔が横切り香里奈は息を呑んだ。夫は2カ月前に失踪したのだ。それっきり一度も連絡はない。同じ飛行機に乗っていたのか? フライトの間なぜ気づかなかったのか? 「Karina」 誰かが呼んでいる。はっと目を開けると緑色の光がチラチラした。目の前には見慣れた飛行機の機内のテー