もちろん反対意見もあるだろう。エコノミストなど市場原理を重視する人々は、「需給が逼迫して石油価格が上昇すれば、より多くの資金を採掘や新規油田の開発に回せるようになり、現在の石油価格では採算が取れない油田も稼働し始める。全ては市場が解決してくれる」と主張するはずだ。 しかし、石油価格が異常に高騰した過去数年間を振り返ってみても、その主張は実証されてはいない。 米国でエネルギー関連の投資銀行を経営し、ブッシュ政権でエネルギー政策のアドバイザーも務めたシモンズ氏の試算によると、原油生産の上流部門への年間平均支出は、2000~04年が1150億ドルであったのに対して、2004~08年は2850億ドルと、原油価格の高騰にシンクロして急増している。 しかし、2004年以降の原油生産量は、日産7300万バレルの水準から伸びていない。2003~08年にかけて、世界は約1.5兆ドルをつぎ込んだが、既存油田の