橙色の袈裟を着たひげ面の男性が、もりそばを食べている。この人物の正体は、達磨大師。インドから中国へ渡り、禅宗を伝えた僧侶である。壁に向かって9年間も座禅を組み、悟りを開いたという「面壁(めんぺき)九年」の逸話で有名だ。 国芳の門人である月岡芳年は「月百姿 破窓月」で、達磨がぼろぼろになった壁の中で座禅する姿を描いている。 達磨は、江戸時代の庶民たちには馴染みのあるキャラクターで、浮世絵では、遊郭の花魁と一緒にいる姿がしばしば描かれている。こちらは勝川春章の肉筆画「達磨と美人図」。達磨と花魁が仲睦まじげに体を寄せ合っている。 国芳の描いた達磨は、木曽街道の守山宿(現在の滋賀県守山市)にあるそば屋で食事中である。右側のせいろはすでに空っぽで、もう20人前近くは食べ終わったようだ。 目の前に10人前のせいろが積まれているのに、さらに追加オーダー。そばを運ぶ店員も、「ぺろりと食べてしまいそうだなあ
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