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ブックマーク / www.riken.jp (59)

  • 放射光施設でLEDが壊れる?その原因を解明

    大型放射光施設「SPring-8」は、SDGsや2050年カーボンニュートラル達成に向けた研究を支える施設で、施設のグリーン化も積極的に進めています。しかし、その過程で意外なところにネックがあったのです。高エネルギーの電磁波である放射線にさらされると、長寿命のはずのLEDが数カ月で点灯しなくなってしまいました。田中 均グループディレクター(GD)らはその原因を究明し、驚くほど簡単な解決方法を見いだしました。 放射線環境下ではLEDが使えない?! 施設のグリーン化の一環として、SPring-8でも、蛍光灯からLEDへの置き換えを実施している。ところが、加速器トンネル内のLEDは数カ月ですべて故障してしまった。強い放射線(X線)の影響と考えられたが、当時、LEDのメーカーでさえそのような故障が起きるとは認識しておらず、原因も分からなかった。田中GDはその原因を探ろうとチームを立ち上げた。 そん

    放射光施設でLEDが壊れる?その原因を解明
  • 線形光円錐問題の数学的な解決

    理化学研究所(理研)革新知能統合研究センター汎用基盤技術研究グループ数理科学チームの桑原知剛研究員と慶應義塾大学理工学部物理学科の齊藤圭司教授の共同研究チームは、量子力学的な多数の粒子系(量子多体系[1])の情報伝達における新たな物理法則を発見しました。 研究成果は、量子力学的に力が働き合う多数の粒子が示すダイナミクスに新たな知見を与えるだけでなく、量子コンピュータ[2]など情報処理技術における基的制約の理解にも貢献すると期待できます。 量子多体系において長距離で働く力は、どんなに遠く離れた粒子間でも瞬時に影響が伝わるため、たとえ素早く減衰したとしても、情報の伝達速度が無限大になる可能性があります。どのような条件で情報伝達速度が有限になるかは「線形光円錐問題」と呼ばれ、物理学における重要な未解決問題でした。 今回、共同研究チームは、量子多体系において長距離力が粒子間に存在するとき、情報

    線形光円錐問題の数学的な解決
  • 蒸発するブラックホールの内部を理論的に記述

    理化学研究所(理研)数理創造プログラムの横倉祐貴上級研究員らの共同研究チームは、量子力学[1]と一般相対性理論[2]を用いて、蒸発するブラックホールの内部を理論的に記述しました。 研究成果は、ブラックホールの正体に迫るものであり、遠い未来、情報[1]を蓄えるデバイスとしてブラックホールを活用する「ブラックホール工学」の基礎理論になると期待できます。 近年の観測により、ブラックホールの周辺のことについては徐々に分かってきましたが、その内部については、極めて強い重力によって信号が外にほとんど出てこられないため、何も分かっていません。また、ブラックホールは「ホーキング輻射[3]」によって蒸発することが理論的に示されており、内部にあった物質の持つ情報が蒸発後にどうなってしまうのかは、現代物理学における大きな未解決問題の一つです。 今回、共同研究チームは、ブラックホールの形成段階から蒸発の効果を直

    蒸発するブラックホールの内部を理論的に記述
  • 新たなハイパー原子核「グザイ・テトラバリオン」

    理化学研究所(理研)仁科加速器科学研究センターストレンジネス核物理研究室の肥山詠美子室長(九州大学大学院理学研究院教授)、量子ハドロン物理学研究室の土井琢身専任研究員、理研数理創造プログラムの初田哲男プログラムディレクター、京都大学基礎物理学研究所の佐々木健志特任助教らの国際共同研究グループは、グザイ粒子[1]1個と核子[2]3個からなる新たなハイパー原子核(ハイパー核)[3]「グザイ・テトラバリオン」の存在を理論的に予言しました。 研究成果は、どのようなハイパー核が存在しうるのかという物理学の根源的問題の解明につながるとともに、中性子星[4]内部のような超高密度極限状態における物質構造の解明に貢献すると期待できます。 通常の原子核は核子というバリオン[5]から構成されていますが、グザイ(Ξ)粒子と核子からなるハイパー核については、どのような種類のものが存在するかほとんど分かっていません

    新たなハイパー原子核「グザイ・テトラバリオン」
  • クォークから中性子星の構造解明へ道筋 | 理化学研究所

    ポイント スーパーコンピュータの大規模シミュレーションと量子多体論を融合 中性子星内部の超高密度物質をあらわす「状態方程式」を導出 超新星爆発、中性子星合体などの爆発的天体現象の理論的解明に道筋 要旨 理化学研究所(理研、野依良治理事長)、日大学(大塚吉兵衛学長)、京都大学(松紘総長)、筑波大学(永田恭介学長)は、スーパーコンピュータを用いた大規模数値シミュレーションと多粒子系の量子論である量子多体理論を用いて、中性子星の内部構造を表す「状態方程式[1]」を初めて理論的に導き出しました。これは、理研仁科加速器研究センター(延與秀人センター長)初田量子ハドロン物理学研究室の井上貴史客員研究員(日大学生物資源科学部 准教授)、同 土井琢身研究員、京都大学基礎物理学研究所の青木慎也教授、筑波大学数理物質系の石井理修准教授をはじめとする共同研究チーム「HAL QCD Collaboratio

  • 鉄を用いた安価で効率のよい水素化触媒を開発 | 理化学研究所

    鉄を用いた安価で効率のよい水素化触媒を開発 -1分以内の高速での水素化反応を実現、従来法の数百分の1に反応時間を短縮- ポイント 水素化反応触媒としてレアメタルのパラジウムではなく安価で豊富にある鉄を利用 水にも有機化合物にも親和性が高い樹脂にナノ化した鉄粒子を付着 反応溶媒として毒性の低いアルコールも利用でき安全性が向上 要旨 理化学研究所(理研、野依良治理事長)とマギル大学(ヘザー マンロー·​ブラム学長)は、鉄を用いた新しい水素化触媒[1]を開発し、石油化学品製造において極めて重要な水素化反応を1分以内で進行させることに成功しました。これは、環境資源科学研究センター(篠崎一雄センター長)グリーンナノ触媒研究チームの魚住泰広チームリーダー(自然科学研究機構分子科学研究所錯体触媒研究部門 教授兼務)、山田陽一副チームリーダー、ならびにカナダのマギル大学化学科ムーレス研究室のオードリー ム

  • 放射光でキラル物質の3次元透視を実現 | 理化学研究所

    2013年6月27日 独立行政法人理化学研究所 国立大学法人東京大学大学院新領域創成科学研究科 学校法人青山学院 公益財団法人高輝度光科学研究センター ポイント 大型放射光施設SPring-8で物質の利き手を可視化するX線顕微鏡システムを開発 キラル物質の内部結晶組織をミクロンスケールで3次元観察 物質の利き手をそろえて結晶化させる技術の開発に新しい道筋 要旨 理化学研究所(理研、野依良治理事長)、東京大学(濱田純一総長)、青山学院大学(仙波憲一学長)と高輝度光科学研究センター(土肥義治理事長)は、放射光X線を利用してキラル物質の内部結晶組織をミクロンレベルで可視化する技術を開発しました。これは、理研放射光科学総合研究センター(石川哲也センター長)量子秩序研究グループ スピン秩序研究チームの大隅寛幸専任研究員、高田昌樹グループディレクターと、東京大学大学院新領域創成科学研究科の有馬孝尚教授

  • 窒素分子の切断と水素化を常温・常圧で実現

    ポイント 常温・常圧で窒素分子の窒素-窒素結合を切断、窒素-水素結合を生成 水素と窒素とチタン化合物のみで反応、特殊な試薬は不要 窒素と水素から省エネルギーでアンモニアを合成できる可能性 要旨 理化学研究所(理研、野依良治理事長)は、新たに合成した多金属のチタンヒドリド化合物[1]に窒素分子(N2)を常温・常圧で取り込ませ、窒素-窒素結合を切断し、窒素-水素結合の生成(水素化)を引き起こすことに成功しました。この成果は、従来に比べ、少ないエネルギーでアンモニア(NH3)[2]を合成できる手法の開発につながります。これは、理研環境資源科学研究センター(篠崎一雄センター長)先進機能触媒研究グループの侯召民(コウ ショウミン)グループディレクター、島隆則上級研究員、胡少偉(フー シャオウェイ)特別研究員、亢小輝(カン シャオフイ)国際プログラムアソシエイト、中国大連理工大の羅一(ルー イー)教授

    窒素分子の切断と水素化を常温・常圧で実現
  • 超流動ヘリウム3で「カイラル対称性の破れ」の直接観測に成功 | 理化学研究所

    ポイント 電子に働く力(固有マグナス力)の発見で原子のクーパー対の回転方向が測定可能に クーパー対が右回りか左回りのどちらかの回転方向を選ぶことを実証 対称性の破れの結果として生じる位相欠陥の詳細な理解に貢献 要旨 理化学研究所(理研、野依良治理事長)は、超流動ヘリウム3-A相[1]において、2つのヘリウム原子の対「クーパー対[2]」が右回りまたは左回りのどちらかの回転運動を選ぶ、という「カイラル対称性の破れ[3]」を直接観測することに成功しました。これは、理研河野低温物理研究室(創発物性科学研究センター 量子凝縮相研究チーム)の池上弘樹専任研究員と河野公俊主任研究員(同チーム チームリーダー)、古崎物性理論研究室の堤康雅基礎科学特別研究員による研究チームの成果です。 私たちの身の周りの物理法則は、並進対称性や回転対称性などさまざまな対称性を持っています。しかし、多くの物質は自然が来持っ

  • X線を2回当てて「中空原子」の生成に世界で初めて成功 | 理化学研究所

    ポイント 1京分の2秒弱の間に2回、X線を原子に当てることに成功 太陽光の1兆倍のさらに1千万倍の強さのX線で初めて見える現象 中空原子を利用したタンパク質構造解析への応用に期待 要旨 理化学研究所(理研、野依良治理事長)、分子科学研究所(大峯巌所長)と高輝度光科学研究センター(土肥義治理事長)は、X線自由電子レーザー(XFEL;X-ray Free Electron Laser)施設「SACLA[1]」を使い、集光して強度を上げたXFELをクリプトン[2]原子に照射して、原子核の最も内側(K殻)の軌道を回る電子2個を順番にはじき出し、K殻に電子がない「中空原子[3]」の生成に初めて成功しました。これは、理研放射光科学総合研究センター(石川哲也センター長)XFEL研究開発部門ビームライン研究開発グループ理論支援チームの玉作賢治専任研究員、矢橋牧名グループディレクターと、分子科学研究所光化学

  • 電子ビームをオーダーメードで加速 | 理化学研究所

    ポイント レーザー発振に最適なエネルギーを持つ電子ビームを全てのビームラインに供給 線形加速器の安定性やビーム品質を全く損なわない 放射光を約100倍明るくするSPring-8次期計画に不可欠な技術 要旨 理化学研究所(理研、野依良治理事長)と高輝度光科学研究センター(土肥義冶理事長)は、加速器の安定性やビーム品質を落とさずに線形加速器[1]の電子ビームを電子バンチ(電子の集団)ごとに異なる目標ビームエネルギーまで加速する方法を考案し、X線自由電子レーザー(XFEL)施設SACLA[2]を用いて実証しました。これは、理研放射光科学総合研究センター(石川哲也センター長)XFEL研究開発部門加速器研究開発グループ先端ビームチームの原徹チームリーダー、田中均部門長、ビームライン研究開発グループ理論支援チームの玉作賢治専任研究員らの共同研究グループの成果です。 SACLAでは、構造解析や物性測定な

  • 絶縁部分が4μmの次世代高温超伝導ワイヤを開発 | 理化学研究所

    絶縁部分が4μmの次世代高温超伝導ワイヤを開発 -超伝導機器の小型化、高磁場化、低コスト化の実現に向けた一歩- ポイント 絶縁部分の厚さを従来の10分の1以下の薄さで実現 次世代の主流を方向づける革新的な次世代高温超伝導ワイヤ NMRやMRIなどの超伝導機器をはるかにコンパクトに 要旨 理化学研究所(理研、野依良治理事長)と千葉大学(齋藤康学長)は、次世代の超伝導ワイヤ[1]として期待されるレアアース系の「次世代高温超伝導ワイヤ[1]」の絶縁部分の厚さを従来の10分の1となる4μmにすることに成功しました。これは、理研ライフサイエンス技術基盤研究センター(渡辺恭良センター長)構造・合成生物学部門 NMR施設の前田秀明施設長、柳澤吉紀基礎科学特別研究員、高橋雅人上級研究員らと、千葉大学大学院工学研究科の中込秀樹教授らとの共同研究グループによる成果です。 超伝導とは、極低温下で物質の電気抵抗が

  • 蛍光プローブ「Eprobe」のリアルタイムPCRへの応用 | 理化学研究所

    蛍光プローブ「Eprobe」のリアルタイムPCRへの応用 -個別化医療の進展に合わせ簡便・正確な遺伝子検査、病原体検出法の確立へ- ポイント 配列特異的に蛍光を発するEprobeによるリアルタイムPCRの検出系を開発 1つのEprobeで遺伝子増幅の検出と遺伝子の変異検出が可能 複数色のEprobeを用いることにより1チューブで異なる遺伝子配列に対応 要旨 理化学研究所(理研、野依良治理事長)と理研ベンチャー[1]のダナフォーム(三谷康正代表取締役社長)は、人工核酸を利用した蛍光プローブ「Eprobe(イープローブ)®」とリアルタイムPCR法[2]を組み合わせることで、特定の遺伝子配列のコピー数や発現量、変異の有無を従来法に比べて正確に検出する方法を開発しました。これは、理研ライフサイエンス技術基盤研究センター(渡辺恭良センター長)核酸診断技術開発ユニットの臼井健悟ユニットリーダー、マティ

  • 新しいコンピューター「知的ナノ構造体」の構築が可能に | 理化学研究所

    ポイント 自律的に環境に適応し最適に情報処理を行う「粘菌」の行動原理をヒントに 多くの組合せ選択肢から最も確率の高い答えを超高速で出せるナノシステム 不確実な環境下で正確で高速な意思決定を要求される局面に応用可能 要旨 理化学研究所(理研、野依良治理事長)、情報通信研究機構(坂内正夫理事長)と東京大学(濱田純一総長)は、単細胞生物「粘菌[1]」の行動原理に基づき、ナノサイズの量子ドット[2]間の近接場光[3]エネルギーの移動を用いて、高効率に意思決定をする全く新しい概念のコンピューター「知的ナノ構造体」が構築できることを、実際のデバイス構成を想定したシミュレーションにより実証しました。これは、理研基幹研究所 理研-HYU連携研究センター[4]揺律機能研究チーム(当時)の原正彦チームリーダー(現 理研グローバル研究クラスタ 客員主管研究員)、金成主研究員(現 物質・材料研究機構 国際ナノアー

  • 超伝導体で挟んだ強磁性体中を長距離流れるスピン流の原理を発見 | 理化学研究所

    超伝導体で挟んだ強磁性体中を長距離流れるスピン流の原理を発見 -発熱がなく超低消費電力で動作する次世代スピントロニクスデバイスへ道筋- ポイント 理論的に従来の数百倍となる数十ナノメートル以上の伝搬距離が達成可能 長距離伝搬スピン流は、スピンの向きが平行なスピン三重項クーパー対 スピン三重項クーパー対により、スピン流と電流の分離を理論的に予測 要旨 理化学研究所(理研、野依良治理事長)は、2層の強磁性体をs-波超伝導体[1]で挟んだ「強磁性ジョセフソン接合[2]」を考案し、電子スピンの向きが平行な電子対(スピン三重項クーパー対[3])によるスピン[4]の流れ(スピン流)が、強磁性体中を長距離にわたって伝搬することを理論的に見いだしました。これは、理研柚木計算物性物理研究室の柚木清司准主任研究員と挽野真一基礎科学特別研究員ら研究チームによる成果です。 絶縁体を超伝導物質で挟んだ「ジョセフソン

  • 悲しい音楽はロマンチックな感情ももたらす | 理化学研究所

    ポイント 音楽家でなくとも、誰でも悲しい音楽を聴くとき快の感情も体験することを示す 芸術場面で体験する悲しみは、日常場面で体験する悲しみと異なる 芸術鑑賞場面での悲しみを理解するために、「代理感情」の概念を新しく提案 要旨 理化学研究所(理研、野依良治理事長)と東京藝術大学(宮田亮平学長)は、悲しい音楽は悲しみだけでなくロマンチックな感情をも聴き手にもたらし、また、その作用が音楽経験の有無に関係なく引き起こされることを実証しました。この成果は、「聴いた音楽を悲しい音楽と判断すること」と「音楽を聴いて実際に悲しみを体験すること」が別であることを示しており、なぜ私たちが悲しい音楽をあえて聴くのか、について考える重要な手がかりとなります。これは、理研脳科学総合研究センター(利根川進センター長)情動情報連携研究チームの岡ノ谷一夫チームリーダー、川上愛ジュニアリサーチアソシエイト(現客員研究員、JS

  • 分子シャペロンがアミロイドβ凝集を抑制し低毒化することを発見 | 理化学研究所

    ポイント アルツハイマー病発症時に分子シャペロン「PFD」が増加することをマウスで確認 ヒト型PFDにより低毒性の可溶性オリゴマーが形成 低毒性と高毒性可溶性オリゴマーは抗体認識が異なり、表面構造の差異が毒性に重要 要旨 理化学研究所(理研、野依良治理事長)は、タンパク質の折り畳みを助ける分子シャペロン[1]の1つ「ヒト型プレフォルディン(PFD)[2]」が、アルツハイマー病の原因とされるアミロイドβ[3]の凝集を抑制し、低毒性化していることをマウスを用いた実験で発見しました。これは、理研の基幹研究所(当時)前田バイオ工学研究室のカリン ソルヤードゥ(Karin Sörgjerd)国際特別研究員(現 理研脳科学総合研究センター 神経蛋白制御研究チーム研究員)、座古保専任研究員、前田瑞夫主任研究員、理研脳科学総合研究センター疾患メカニズムコア神経蛋白制御研究チームの西道隆臣シニアチームリーダ

  • コヒーレントX線の斬新な利用法を開発

    ●コヒーレントX線のブラッグ回折現象を利用して厚い試料のナノスケールひずみ分布を可視化 ●ひずみ場の位相特異点を利用した新しい微小X線渦ビーム形成法を提案 大阪大学大学院工学研究科の高橋幸生准教授、理化学研究所播磨研究所放射光科学総合研究センターの石川哲也主任研究員らの研究グループは、物質中の転位ひずみ場を可視化して、X線渦ビームを発生させるというコヒーレントX線の斬新な利用方法を開発しました。 転位とは結晶中に含まれる線状の結晶欠陥のことであり、転位の周りで局所的に結晶はひずんでいます。この転位ひずみ場は、物質の力学特性や電気伝導特性に重要な役割を果たすことが知られています。転位の観察には、X線トポグラフィーや透過電子顕微鏡などが一般的に用いられますが、空間分解能や試料の厚さに制約がありました。研究グループは、大型放射光施設SPring-8 の理研物理科学IビームラインBL29XULにお

    コヒーレントX線の斬新な利用法を開発
  • 植物のリン欠乏ストレスを緩和する新しい糖脂質を発見 | 理化学研究所

    ポイント 脂質メタボローム解析により、リン欠乏を補う植物糖脂質「グルクロン酸脂質」を発見 グルクロン酸脂質の生合成に必須な遺伝子「SQD2遺伝子」を発見 イネにもグルクロン酸脂質を発見、多様な植物でのリン欠乏ストレス緩和機能を示唆 要旨 理化学研究所(野依良治理事長)は、リンが不足した環境でも植物の生育を維持する糖脂質「グルクロン酸脂質[1]」を発見し、その生合成に必須な「SQD2遺伝子」を同定しました。これは、理研植物科学研究センター(篠崎一雄センター長)メタボローム機能研究グループの斉藤和季グループディレクター、岡咲洋三研究員らの研究グループによる成果です。 肥料の三大要素「窒素・リン酸・カリ」の1つとして挙げられる“リン”は、植物の生育に必須な元素です。植物の生体膜は主にリンを含む脂質(リン脂質)と糖脂質で構成されていますが、植物体内のリンが欠乏すると生体膜中のリン脂質が減少し、それ

  • “対称性の自発的破れ”に関する南部理論の適用限界を打破 | 理化学研究所

    ポイント 素粒子物理から身の回りに存在する波まで、あらゆる波の性質の予言が可能に ミクロな力学からマクロな現象を導き出す森理論を南部理論に融合 対称性の自発的破れの質的な解明や、新素材の物性物理、宇宙創成の理解に貢献 要旨 理化学研究所(野依良治理事長)は、「対称性の自発的破れ」に関する南部陽一郎博士の理論(南部理論[1])の適用限界をなくし、連続対称性[2]の自発的破れに伴う自然界の「波」全体を単一の方程式で理解できる理論の構築に成功しました。これは、理研仁科加速器研究センター(延與秀人センター長)初田量子ハドロン物理学研究室の日高義将研究員による研究の成果です。 私たちの身の回りには、空気中を伝わる音波や、壁をたたくとコンコンと伝わる個体中の振動の波など、多種多様な波が存在します。これらの波は、円や球のようにどれだけ回転させても対称性を保つ「回転対称性」や、気体や液体のように分子がど