ガスを全く使っていない住宅なのに、ガス中毒で人が倒れた。敷地の外にあるガス管から漏れた都市ガスが、地中を伝わり床下に侵入したのが原因だった。住宅は地下を含む周辺からさまざまな影響を受ける恐れがあることを、改めて実感させる奇怪な事故だった。 文/池谷 和浩 2006年8月24日 5月上旬の未明、北海道帯広市のA邸の和室で、泊まりにきていたAさんの両親と叔父、叔母が一酸化炭素中毒で倒れ、救急車で病院に運ばれた。4人は70~80歳代だった。 中毒の原因は都市ガスだった。全国のガス会社のほとんどは、都市ガスの原料を一酸化炭素を含まない天然ガスなどに転換済みだが、A邸の地元の帯広ガスはまだ転換していなかった。 ここまでなら、通常のガス漏れ事故だが、事態は複雑な様相を呈した。A邸はガスを全く使っていない住宅だったからだ。