地球温暖化によって、私たちの「食」に赤信号が点滅している。色づかないブドウ、皮が浮いたミカンなど、気温上昇による果物への異変はすでに全都道府県で起きており、水稲も九州を中心に品質が大きく低下。他方、海水温の上昇に伴い漁業資源にも危機が忍びよっている。海外に目を向ければ、オーストラリアでは大干ばつによって小麦価格が高騰するなど、食料自給率40%の日本の食卓をも揺るがす。こうしたなか、2008年6月には環境省が『気候変動への賢い対応──地球温暖化影響・適応研究委員会報告書』をまとめるなど、この問題に国や自治体も本格的に取り組む姿勢を見せはじめた。食料生産の現場で温暖化を背景にした影響がどう出ているのか、それをどう克服しようとしているかを探った。 「昨年はブドウが十分着色しなかった。こんなのは初めての経験」。長野県上田市のブドウ農家、水無瀬良雄さんが不安そうに語る。赤ワインの原料となるメルロー