かつて衝撃的な著書『アメリカが中国を選ぶ日』を発表したオーストラリアの元国防副次官。もはや中国抜きでは成り立たなくなった世界について、厳しい未来を語る。安全保障分野のトップジャーナリスト、牧野愛博氏によるオーストラリアレポート第4弾。 私は昨年11月、オーストラリアに出張する前、日本の知識人たちに「豪州で一番のリアリストは誰だろうか」と尋ねて回った。私の頭のなかに「リアリストこそ、現実をよく知る人物」というひとつの仮定があったからだ。 専門家なら誰もが知る言葉のひとつに、「外交や安全保障は、やればやるほどリアリストになる」という文句がある。安全保障と外交の世界に平等という言葉はない。国連安全保障理事国や核拡散防止条約(NPT)体制など、全く不平等な取り決めだが、「戦後秩序」「パワーゲーム」などの言葉の下で、受け入れなければならない。 外交や安全保障は、こうした彼我の力の差や国際関係を冷静に