in『オースティン哲学論文集 (双書プロブレーマタ)』 哲学者達が専念してきた「本物であること(reality)」の問題は、科学者達の関心を引きつけてはきませんでしたが、これに対して(私が誤解していないならば)哲学者達が無視する傾向にある確かさ(sureness and certainty)の問題は、科学者達の関心を相当程度引きつけてきたように思われます。尺度と基準という装置は、総体として、不確かさに対抗しつつ言語のもちうる精密さを高めることを目標にしているように見えますし、こうした努力には、科学においては十分見返りがあります。しかし「本物の(real)」および「本物でない(unreal)」という語については、科学者達は賢明にも、実質の明確な言葉によって代替する傾向を示しています。科学者達は、次々と多様さを増していく様々なケースをカバーするために、こうした代替用語を次々に発案し、定義してい