第一部 // 第二部 // 第二部(続)// 還元ノ−ト // FINE lecture 第一部 道徳起源論と還元主義 English Abstract 1 ダーウィンの「危険な考え」 日本では進化論に関心をもつ人は多いようだが、哲学の研究者で自分の研究に進化論の視点を取り入れて本格的な議論を展開する人はまだ少ないようである。日本の哲学論壇の「常道」として、欧米の有名な研究者が華々しい成果を発表すると、その尻馬にのって訳者や紹介者が一時的に騒ぐ、という傾向があるが、哲学と進化論との結合についても、いまその傾向が時流に「なりかけて」いるようである。わたしが念頭においているのは、認知科学の哲学ですぐれた仕事をしてきたアメリカのダニエル・デネットの最近の一連の著作である。昨年から今年にかけて、『心はどこにあるのか』(原著1996)と『解明される意識』(原著1991)という