辻広雅文(ダイヤモンド社論説委員) 【第46回】 2008年10月01日 「質素で退屈で憂鬱な低成長時代が始まる」 池尾和人・慶応大教授に聞く 池尾 はっきり言えるのは、米国金融産業の期待収益率は下方修正せざるを得ない、ということだ。この四半世紀、米国金融産業のROEは高すぎた。30~40%ものリターンを求めることに無理があることが、今回の金融危機で明白となった。米国金融産業の期待収益率の低下に対応するために、米国はもちろん、世界中の構造調整が必要となる。 ――具体的には、どんな構造調整が起こるのか。 池尾 今回の金融危機の背景には、世界経済の不均衡がある。中国などの過剰貯蓄が世界的長期金利の低下をもたらし、バブルを生成した、と言う構図だ。その過剰貯蓄の運用を引き受け、荒稼ぎをしたのが投資銀行だ。その投資銀行モデルが終焉すれば、過剰貯蓄の提供者へのリターンは大幅に低下する。中国や日本