牛丼の価格競争と居酒屋の価格競争における最大の相違点は、前者のみが新たな需要を創出していることだ。牛丼の値下げにより牛丼業界は、ファストフード、ファミリーレストラン、持ち帰り弁当などの他業界から、顧客を奪うことに成功した。これに対して居酒屋業界の客数は増加していない。居酒屋業界は身を削って、既存顧客を取り合っているにすぎないのだ。 深刻な構造不況に突入 居酒屋業界の苦境の背景には、居酒屋市場の大幅な縮小がある。財団法人食の安全・安心財団のデータによると、1990年代に1.4兆円程度あった居酒屋、ビアホールなどの市場規模が、2009年には約1兆円にまで縮小している。居酒屋業界は深刻な構造不況のただ中にあるのだ。 居酒屋ビジネスに対する逆風は、いくつも指摘できる。 (1)主要客層である若年層の人口減少 (2)消費者の所得減少(特に若年層で著しい) (3)消費者の酒離れ(特に若年層で著しい) (