本コラムでは、人材マネジメント・労働雇用政策を研究テーマとするシンクタンク、リクルートワークス研究所所長の大久保幸夫氏に、転換期を迎え、企業において今後の施策が緊急視されている人材マネジメントに関し、さまざまな角度から語ってもらう。 不況期に何が起こるのかを歴史から振り返ると 前回のコラムでは、過去の不況に学ぶことが必要だと書きました。そこで今回は不況の歴史を辿りながら、「不況がいったい何をもたらすのか」を考えてみましょう。 まず、近世、江戸後期の不況。呉服屋などの商家は、マーケットの縮小に伴い、それまであった「のれん分け」制度を実質形骸化して、内部昇進で最後まで勤め上げる人事制度を採用しました。この制度は今の人事制度につながる大発明でしたが、内向きになり、変化対応力を失わせるという悲劇をもたらしました。 その結果多くの商家が、江戸から明治への大転換期を乗り越えられずに倒産していったのです