言葉で決めつけたくないから映像にする 山田尚子という監督は、今日本の現役映画監督の中で最もフィルムメーカーらしい人なんじゃないかという気がする。今年カンヌ国際映画祭に行く濱口竜介に近い存在かもしれない。人間は言葉で思考し、コミュニケーションする生き物だが、優れたアーティストは絵や音楽などそれぞれの手法で言葉と言葉の間にこぼれ落ちた、捕まえきれない情動を表現する。凡庸な表現者は、言葉の範疇に収まるものを他の表現物に代替させているだけにすぎない。ただライターとしては、そういう作品の方が仕事は楽だ。優れた作品ほど仕事しづらくて困る。困るけど映画ファンとしてはそういう作品に出会えた方が嬉しい。 で、『リズと青い鳥』はどうなのかと言うと、非常に困る作品だ。素晴らしい。あの2人を描くためには、確かに映像ではなくてはならかったという気がする。原作では希美とみぞれの間で久美子が立ち回ることで描かれた2人の
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