美徳の言説の裏には劣等複合が埋まつてゐる! これは信じていいことなんだよ。何故つて、非の打ち所のない美徳の言説があんなにも見事に咲くなんて信じられないことぢやないか。俺はあの美しさが信じられないので、この二三日不安だつた。しかしいま、やつとわかるときが來た。美徳の言説の裏には劣等複合が埋まつてゐる。これは信じていいことだ。 どうして俺が毎晩ネットを巡回している際に、俺の部屋の數ある本のうちの、選りに選つて暗くて重いもの、もりしげの作品なんぞが、千里眼のやうに思ひ浮んで來るのか ―― お前はそれがわからないと云つたが ―― そして俺にもやはりそれがわからないのだが ―― それもこれもやつぱり同じやうなことにちがひない。 一體どんな善き想いの論説でも、所謂眞つ盛りといふ状態に達すると、あたりの空氣のなかへ一種祕な雰圍氣を撒き散らすものだ。それは、よく廻つた獨樂が完全な靜止に澄むやうに、また、