もう25年近く前のことですが、内科医であった母とともに地域で在宅医療による認知症の人のみとりをしていました。現在のような在宅療養支援診療所が訪問診療をする制度ができる前で、当時は往診をする医療機関が少なかったこともあり、私たちはできるだけ「家で最期を迎えたい」と希望する人の人生の最終段階を、たとえ何年かかっても見届けることにしました。診療所のカルテにはこれまで在宅で臨終まで診療を続けた273人の記録が残っています。一つひとつが、人生の終末期でもあり、総仕上げでもあります。 がんとは違う終末期 今はがんなどで医療的に余命が少なくなった人が安らかに苦痛なく人生を全うするための終末期医療や、がんの痛みなどから解放する緩和ケアという言葉が使われますが、当時は終着駅を意味するターミナルケアという用語が使われていました。 しかしよく考えてみると認知症の場合は、がんの終末期医療などとは異なります。何年も
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