妊娠中、病気になってもおなかの赤ちゃんへの影響を考えて、薬を飲まずに我慢した経験がある女性は多いのではないでしょうか。出産年齢が高齢化し、慢性的な病気を抱えながら妊娠を希望する女性も増えていると専門家が指摘する中、議論になっているのが「妊婦禁忌薬」。胎児などへの影響から薬の添付文書で妊娠中の女性には、投与しないこととされた薬です。服用すべき薬が「妊婦禁忌」とされたことでおきている深刻な実態を科学文化部の信藤記者が取材しました。 神奈川県の前田綾子さん(仮名)は、18歳だった高校2年生のとき、潰瘍性大腸炎と診断されました。大腸の内側の広い範囲に炎症がおきたり潰瘍ができたりする難病で、激しい腹痛と下痢が一日中続きます。通学途中、自宅からバス停まで歩く10分間にも激しい腹痛に襲われて動けなくなったり、卒業後、就職先の会社に通うのにも何時間も前に電車に乗って、途中何度もトイレに入り、腹痛をがまんす