東北地方の重度障害者施設に勤める40代の男性の腕にはいくつも傷がある。右前腕部が多く、取材した日は赤い傷が五カ所ほど。暴れる利用者が爪を立てたり、たたいたりした痕だ。かみつかれて血が出たこともある。 「反応すればさらに興奮するから、平然と対応するように教わった。押さえつけるわけにはいかず、他の利用者にけがをさせてもいけない。職員がけがをしてでも盾になるしかない」 約50人の利用者が暮らす入所施設で働く。担当するのは約20人いる最重度の人たち。利用者が暴れるのは毎日のことだ。 福祉を志して、今の施設に勤め始めて1年近く。理想を持ってはいるが、24時間を超える宿直が明けるとぐったりする。疲労でケアが乱雑になる日もある。 「保護者の疲れきった表情、施設で働いている職員の生気の欠けた瞳」 津久井やまゆり園で起きた事件で逮捕された植松聖(さとし)容疑者(26)は、衆院議長に宛てた手紙にそう書いた。そ
介護施設などを運営する町田市の社会福祉法人が、シングルマザー専用という珍しい職員寮を開設した。介護職の人手不足が深刻化する中、母子世帯に働きやすい環境をアピールし、人材確保につなげる狙いだ。 町田市金森東3丁目の住宅街に新築された、木造2階建て(延べ約200平方メートル)の住宅が寮だ。町田市や横浜市で老人ホームや通所介護施設などを運営する社会福祉法人「合掌苑」がつくった。居室は別だが、台所や居間を共用するシェアハウス方式で、最寄りの施設から徒歩3分。保育所や小学校も近くにある。 20平方メートル弱の個室が5部屋あり、子どもを育てる母子5世帯が生活できる。共用スペースには冷蔵庫やコンロなども複数ある。光熱費込みの家賃は月額4万5千円だ。 事業費は約7千万円かかった。… この記事は有料会員記事です。有料会員になると続きをお読みいただけます。 この記事は有料会員記事です。有料会員になると続きをお
あさかわ・すみかず/1948年2月東京都中野区生まれ。東京都立西高校から慶應義塾大学経済学部に。1971年日本経済新聞社に入社。小売り・流通業、ファッション、家電、サービス産業などを担当。87年に月刊誌『日経トレンディ』を創刊、初代編集長を5年間勤める。93年流通経済部長、95年マルチメディア局編成部長などを経て、98年から編集委員。高齢者ケア、少子化、NPO活度などを担当。2011年2月に定年退社。同年6月に公益社団法人長寿社会文化協会常務理事に就任。66歳。 医療・介護 大転換 2017年5月に「地域包括ケアシステムの強化のための介護保険法等の一部を改正する法」が成立し、18年4月からは介護保険と医療保険のサービス内容が改定された。少子高齢化が急速に進む中で、日本の社会保障はどう大きく変革するのか。なかなかその全貌が見えてこない、医療・介護大転換の内容を丁寧に解説していく。 バックナン
介護・福祉職の魅力をゲームを通じ知ってもらおうと、甲府市北口の県立図書館で31日、高齢者や障害者になりきったり、介護職を体験したりするゲーム形式のイベント「ザ・シックスセンス~医療福祉系リアル人生ゲーム~」が開かれた。 医療福祉関係のイベントなどを開いているNPO法人「Ubdobe(ウブドベ)」(東京都)が企画し、県社会福祉協議会が主催。2025年には介護職の人材が全国で約37万人分不足するとされており、ゲーム形式で若者に興味を持ってもらい人材確保につなげたい狙いがある。 来場者はルーレットを回して止まったマス目の指示に従いゴールを目指す。たとえば「ボランティア活動に参加し、介護施設に行く」のマスでは高齢者が立ち上がるのを補助する方法を学び、「脳の血管が詰まり手足に障害が残る」のマスでは足に計6キロの重りをつけて歩く体験をした。 スタッフの1人で甲府市で介護福祉士として働く 江連 ( えづ
宮城県や県教育委員会、東北福祉大、県社会福祉士会、介護関連団体などで構成する宮城県介護人材確保協議会は、中高生など若年層を中心に介護職の重要性を認識してもらう活動を始めた。介護職は今後、不足がさらに深刻化する見込み。介護職に対するイメージを向上させ、優秀な人材を確保する狙いだ。介護に携わる人を「ケア・ヒーローズ」と名付けた小冊子を作成し、宮城県内に約2万2000人いる中学3年生の全員に配布した
神奈川県相模原市の障害者施設「津久井やまゆり園」で起きた殺傷事件は、無事だった入所者や職員にも大きなショックを与えた。園に残る人たちのケアが課題となっている。 施設を運営する社会福祉法人かながわ共同会や県によると、園には事件前、10~70代の149人が長期入所していた。その約8割が、必要とされる支援の度合いを示す「障害支援区分」で最も重い6だった。 27日時点で、けがをしなかった約100人が園に残った。一部の入所者は家族が自宅に引き取り、共同会が運営する他の施設に移った人もいるという。 現場検証などのため現場の建物のほとんどが立ち入り禁止になり、事件のあった26日は男性は体育館で食事を取り、夜もそのまま布団を敷いて就寝。女性はホームの被害を受けなかったスペースで過ごした。風呂は27日になっても1カ所しか使えず、順番に利用したという。園側は「同じ場所に一日中いるのは大変なので、日中に外に出ら
3年に1度の介護保険制度の見直しで、サービスを縮小させる議論が20日、本格的に始まった。介護の必要性が低い軽度者向けの生活援助や福祉用具の貸与を保険の対象外とするかが焦点となる。来年の通常国会で法改正が予定されており、年末に結論を出す。 この日の社会保障審議会(厚生労働相の諮問機関)の部会。さっそくサービス縮小の議論に火がついた。 「社会保障の持続可能性確保の観点から、要介護3以上にサービスを重点化していくことを考えざるを得ない」 日本経済団体連合会常務理事の井上隆委員がこう訴えた。健康保険組合連合会副会長の佐野雅宏委員も福祉用具貸与の費用について「毎年200億円程度増えていることは重く捉えるべきだ」と述べ、高額な請求は抑えるよう求めた。 2000年度に始まった介護保険にかかる費用は高齢者の増加で年々増え続け、14年度に10兆円を突破。25年度には倍増すると試算されており、財政制度等審議会
2025年の地域包括ケアシステム構築に向けて エヌ・ティ・ティ アイティ株式会社、東日本電信電話株式会社、エーザイ株式会社は共同で、高齢者が可能な限り住み慣れた地域で自分らしい暮らしを続けることを目指した「地域包括ケアシステム」の実現に向けて、7月11日に医療・介護における多職種連携事業を開始した。 画像はリリースより 政府は、団塊の世代が75歳以上となる2025年をめどに「住まい」「医療」「介護」「予防」「生活支援」が一体的に提供される地域包括ケアシステムの構築を推進しているが、在宅医療においては、医療従事者と介護従事者に加え、患者の家族など多職種の関係者が関わるため、日常業務の中での迅速かつ的確な情報共有が課題となっている。 このような背景のもと、3社は2014年5月から2015年1月の間、品川区の医師会と共同で多職種の関係者によるICTパイロットシステムのトライアルを実施。このトライ
北九州市は、今秋にも始まる介護ロボットの実証実験に向けて、特別養護老人ホームの構造を定めた条例を改正する。地域を限って規制を緩和する「国家戦略特区」に市が指定されたことを受けた対応。市はこの条例改正案を含む22議案を、10日開会の6月定例市議会に提案する。 国は、特別養護老人ホームに対し、10人が生活する個室に対して1室の独立した共同生活室(20平方メートル)を備えるよう基準で定めている。 共同生活室は入所者が食事をしたり余暇を過ごしたりするスペースで、入所者同士や職員と落ち着いた関係を築ける場所になる。そのため、共同生活室には食卓などが置かれており、介護ロボットを入れるには手狭だという。 そこで隣り合う共同生活室をつなげて一体化し、入所者20人に対して1室の共同生活室として使えるよう市の条例を改めて制限を緩和する。2室にそれぞれ置いていた食卓を寄せれば、空間に余裕が生まれる。10人に対し
熊本地震で被害を受けた熊本県の南阿蘇村では、介護施設などに避難している高齢者や障害者を支えるボランティアが今後、不足するおそれがあるとして、ボランティア団体が30日、緊急に募集を始めることなりました。 しかし、団体によりますと、ボランティアに応募する人の数が減ってきているうえ、これまで多くの介護職員を派遣していた2つの社会福祉法人が来月5日までに派遣をやめることになったということです。 このため、今後、こうした人たちを支えるボランティアが不足するおそれがあるとして、30日、緊急に募集を始めることになりました。 「みなみ阿蘇福祉救援ボランティアネットワーク」の石井布紀子さんは、「全国的な人手不足の中で長期的なボランティア活動が難しいのは理解しているが、支援を継続する必要がある」と話しています。
もともと介護職を選んだわけではなかった。福祉を専攻した短大時代は路上ライブに明け暮れ、華やかな芸能界に憧れた。就職の必要に迫られ、特別養護老人ホームの「事務職」の求人に応募。採用されたら介護現場に配属された。 初めてのおむつ替えでは思わず「くせえ!」。お年寄りは好きではなかった。担当したのは認知症の元ヤクザ。口は悪いがインテリで、男としてほれ込んだ。一緒に旅行する約束をした矢先、目の前で倒れて息を引き取った。泣きながら心臓マッサージを施した。 1分後には別れるかもしれない人と向き合う仕事の尊さを知る。覚悟を決めた。「人生の幕引きに手を握るのは俺かもしれない。見合う自分でありたい」 熊本県介護福祉士会長になって9年目に起きた熊本地震。車中泊をしながら介護職のボランティア確保に奔走した。施設や福祉避難所だけでは高齢者を収容できない中で、一般の避難所では周りの人たちが高齢者を支えている。地域で介
和歌山県というと、どんな印象を持つだろうか。近畿地方、しかも大阪の隣にありながらこれといった印象のない、九州でいうところの佐賀、関東でいうところの栃木のようなマイナー県のひとつではなかろうか。中学校の社会の時間に梅の生産量は日本一と習いはするものの、梅に興味がない中学生にとっては今ひとつピンとこない。 我々お父さん世代にとっては、高校野球で有名な智弁和歌山高校(もう少し上の世代では尾藤公監督で有名な箕島高校)があるため、一部の高校野球ファンには野球のメッカとして知られているかもしれない。 今年は和歌山(紀州藩)出身で暴れん坊将軍のモデルにもなった8代将軍徳川吉宗の将軍就任300年ということで、地元では盛り上がりを見せているが、和歌山以外でそれを知る人も少ないし、2015年には世界遺産にも指定されている高野山(こうやさん)の開創1200年記念イベントで一瞬賑わいを見せたが、その効果も今ひとつ
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