高校を卒業したばかりの脳性まひの少年が、思うように動かない自分の体を「生きる教科書」として介護の出前講師を始めた。同じ症状の人への接し方を学ぶことで、現役の介護スタッフや学生にも介護の楽しさを知って欲しいと願う。 3月中旬、大阪府豊中市の障害児施設。看護師や理学療法士ら約10人の輪の中心に畠山亮夏(りょうか)さん(18)=大阪市西淀川区=がいた。この日が講師としてのデビューだ。 全身の筋肉が緊張し意思とは関係なく体が動いてしまう「アテトーゼ型」の脳性まひ。短い単語ならゆっくり話せるものの、周囲とのコミュニケーションは選択肢を示してもらったり、表情を読み取ってもらったりすることで行う。 支えがない状態で床に横たえられると手足がばたついてしまう。でも後ろから支えられると安定してあぐらをかくことができた。亮夏さんは「いい!」と笑顔。体勢が落ち着かない時は「違う!」「もっと下」と眉間(みけん)にし
「この仕事はできません」と線引きせず 今回のモデル事業では、要支援~要介護3の高齢者が仕事を通じて自らの生活を豊かにしてもらうことを目指している。舞台となったのは、伸こう福祉会が神奈川県藤沢市で運営する介護付き有料老人ホーム「クロスハート湘南台二番館」。2017年12月~2018年2月にかけて、86~97歳の合計15人の入居者が「仕事」に参加した。 今回用意したのは、(1)畑仕事、(2)保育園での作業、の2種類である。(1)の畑仕事に関しては、施設から車で7分ほどの場所に東レ建設が高床式砂栽培農業施設「トレファーム」を整備し、畑仕事ができる環境を整えた。トレファームで葉物野菜のフリルアイスとミックスリーフを栽培し、収穫して販売するまでの全工程を行ってもらった。 (2)の保育園での作業は、伸こう福祉会が運営する保育園で実施した。具体的には、児童の散歩の補助や食事の盛り付け、掃除などの仕事をし
認知症を正しく理解し、本人や家族の支えになる「認知症サポーター」が全国で1千万人を超えた。身近な病という認識の広がりから詳しく知りたい市民が増えるとともに、できる範囲で手助けする手軽さも人数増につながった。 サポーター制度の事務局を担う全国キャラバン・メイト連絡協議会(東京都新宿区)が今月、公表した。 サポーター制度は厚生労働省が2005年に始めた。認知症は当時、原因がわからず治らないと偏見の目で見られており、正しく知って不安を除く狙いで導入された。厚労省が「痴呆(ちほう)」から「認知症」に呼び方を変えた直後にあたる。 サポーターになるには約90分の無料講座を受ける。認知症の原因や症状について説明を受け、「驚かせない、急がせない、自尊心を傷つけない」といった心得や、「後ろから声をかけず、目線を合わせる」など会話のコツを学ぶ。年齢制限はない。サポーターの目印の腕輪「オレンジリング」を修了時に
拡大 「ただ電子化するだけではない」新しい介護記録システムを開発した吉岡由宇さん。名札の横にある2次元コードに端末をかざすと、その人専用のページに入り、記録できる。その情報はすべてパソコンに蓄積、表示もできる 「苦痛」をわくわくに-。結婚を機に3年前、特別養護老人ホームの仕事に転身した物理学者が、情報技術(IT)の力で介護を変えようとしている。福岡県福智町の社会福祉法人「福智会」特別顧問、吉岡由宇さん(34)。食事や入浴など利用者のケアの記録を、職員が携帯端末を使って簡単に入力できるシステムを開発した。省力化だけでなく、実際に介護の「質」のレベルアップにつなげ、全国の福祉関係者の間でも注目を集める新しい“科学的介護”の可能性とは。 兵庫県出身、大阪大で理論物理学を学んだ吉岡さん。博士号も取得し、研究者として「数式や論文と向き合う」毎日だったが、学部で知り合った妻と結婚することになり2015
認知症の人が一人で外出したり、道に迷ったりすることを「徘徊(はいかい)」と呼んできた。だが認知症の本人からその呼び方をやめてほしいという声があがり、自治体などで「徘徊」を使わない動きが広がっている。 「目的もなく、うろうろと歩きまわること」(大辞林)、「どこともなく歩きまわること」(広辞苑)。辞書に載る「徘徊」の一般的な説明だ。 東京都町田市で活動する「認知症とともに歩む人・本人会議」メンバーで認知症の初期と診断されている生川(いくかわ)幹雄さん(68)は「徘徊と呼ばれるのは受け入れられない」と話す。散歩中に自分がどこにいるのか分からなくなった経験があるが、「私は散歩という目的があって出かけた。道がわからず怖かったが、家に帰らなければと意識していた。徘徊ではないと思う」。 認知症の本人が政策提言などに取り組む「日本認知症本人ワーキンググループ」は、2016年に公表した「本人からの提案」で、
みの印章堂が開発 七曲市場の老舗はんこ店、みの印章堂は2月14日、介護される人の似顔絵を印刷したベストを発表した。イラストと共に、連絡先や「一人で歩いていたらこちらにご連絡ください」といったメッセージを添え、徘徊(はいかい)時に役立てる。淺井隆一常務は「笑顔になる似顔絵で、おじいちゃん、おばあちゃんの身を守りたい」と話している。 同社は2016年、似顔絵をあしらったメッセージ付きはんこが和歌山市のチャレンジ新商品に認定され、イラスト付き名刺やLINEスタンプなど、似顔絵を生かした商品を多数展開する。 箕尾光芳社長が現在85歳の母親を介護する中、似顔絵を介護に活用できないか思案。何度か行方が分からなくなった際、警察から「どんな服を着ていたか」と聞かれたことから、似顔絵が目印になると考えた。 ベストは、反射材の付いた目立つ蛍光色で、胸元と背中にイラストをあしらう。家族が就寝後に徘徊した際でも探
松戸市内の高齢者世帯約700世帯が加入する自動電話による安否確認システム「あんしん電話」。運営する一般社団法人「あんしん地域見守りネット」(斎藤正史代表理事)は、サービス地域の拡大などを目的に、4月から一括サーバーによる新システムに順次切り替え、普及を目指す。 65歳以上の市民が無料で利用できるのは従来通りだが、新システムでは運用コストの大幅な削減が見込めるという。 これまでは医療機関や介護施設が地域の50世帯程度を受け持ち、それぞれ自動電話をかけるサーバーを設置したため50万円の初期導入費用に加えて、年間2万円のメンテナンス費や、1世帯当たり年間千数百円の電話代を負担していた。新システムでは15万円の初期費用のほかは不要になる。 医療機関などがシステムを導入しやすくなることで、市内西部などのサービスが行われていなかった地域への普及も見込んでいる。 あんしん電話は、同市常盤平の「どうたれ内
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