ブックマーク / dain.cocolog-nifty.com (6)

  • 知的冒険の名著『白と黒のとびら』

    魔法使いの弟子という、ライトノベルな入り口から、情報科学・数学・認知科学にわたる理論―――オートマトンと形式言語をめぐる冒険を堪能する。 見た目はファンタジー、中身はガッツリ計算理論をしながら、「計算とは何か?」、すなわち計算の質に迫る。それは、与えられた前提とルールを組み合わせて解を導くこと。これは、人もコンピュータもできる。計算の量だとか、速さなどは、圧倒的にコンピュータの勝ちなのだが、「人にはできて、コンピュータにはできない計算問題」はあるのだろうか。この秘密は、計算式そのものではなく、計算を解釈する箇所に潜んでいると予想している。人を計算する機械と見なしたとき、問題を解釈する言語をどのように「計算」しているのか? このテーマについて、もっと具体的に「謎の提示→対決→解決」を繰り返す形で示してくれる。しかも、専門用語を編から追いやって、魔法使いの冒険譚として読ませてくれる。○と●

    知的冒険の名著『白と黒のとびら』
    schadling
    schadling 2014/10/17
  • 科学は滅びぬ、何度でも蘇るさ『科学の解釈学』

    哲学による「科学主義」批判。科学の正当性を「信じて」いたわたしにとって、蒙を啓かれる名著なり。一方で、哲学の脆弱性も再確認する。「お前がそう思うんならそうなんだろう、お前ん中ではな」は、ここでも、見事に当てはまる。 書の目的は、科学を御神体として崇め奉る俗悪に、アンチテーゼを提出すること。科学を否定するのでも「反科学」を掲げるのでもない。「究極の真理」として聖化された科学知識を頂点とする知のヒエラルキーを解体することであり、そうした位階秩序を支えている「客観性の神話」を非神話化することだという。トマス・クーンを代表とするパラダイム論による攻撃の試みは、おおむね成功している。 そもそも「科学的客観性」なるものは存在せず、科学者が「観察」するものは、先入観によって歪められているという。「先入観」が言い過ぎなら、科学者たちを律する「何をいかに探求すべきか」という行動規範や価値信念になる。教育

    科学は滅びぬ、何度でも蘇るさ『科学の解釈学』
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    schadling 2014/09/20
  • ものつくりの科学の歴史「工学の歴史」

    科学史や技術史とは一線を画する「工学史」という新しい領域を読む。 かなりの大著と思いきや、ポイントを絞ってコンパクトにまとめている。機械工学を中心に据え、細部は参考文献に任せ、キモのところを大づかみに伝えてくれる。おかげで、歴史・地理の両方から俯瞰的に眺めることができる。知のインデックスとして最適な一冊。 テクノロジー&サイエンスといえば、西洋の専売特許だが、長い目で見ると違う。ニーダム線図、ニーダム・グラフと呼ばれるグラフが顕著だ。歴史的には、長いあいだ中国こそが科学技術の先進国だったことは知っていたが、ここまであからさまだとは。 中国は古代から中世まで科学技術で世界をリードしていた。だが西洋は後期中世から急激に成長し、ルネサンスを境に両者の関係は逆転している。新参者にすぎない西欧が、なぜ中国を追い抜いたのか? もちろん科学と軌を一つにしてきた軍事面から説明できる。「戦争の世界史」を読む

    ものつくりの科学の歴史「工学の歴史」
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    schadling 2012/05/09
  • 最優秀の集大成「ピュリツァー賞 受賞写真 全記録」

    凡百の言葉よりも選一の写真が雄弁だ。そんな最優秀を集大成した一冊。 米国で最も権威あるピュリツァー賞、その受賞写真を年代順に眺める。ベトナム戦争、冷戦、アフリカでの紛争、イラクやアフガニスタンと戦争報道が多いのは、米国の国際的関心とフォトジャーナリズムの潮流が同期していたから。地震や噴火、津波などの災害モノもあり、安全な場所から歴史の現場を垣間見ることができる。 ただし、内側・地方紙の報道写真も挟み込むように受賞している。井戸に落ちた乳児が救出される瞬間を捉えた一枚とか、大柄な赤ん坊を産み終えた直後の母親の笑顔とかに出会うとホッとする。パレードの交通整理をしている警官が、小さな子どもと目線を合わせている微笑ましいショットなんて、見てるこっちの頬がゆるむ。 共通しているのは、一枚で全てを物語っているところ。出来事の背景や状況の説明、カメラマンのプロフィールから撮影情報まで記載されている。だが

    最優秀の集大成「ピュリツァー賞 受賞写真 全記録」
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    schadling 2012/01/27
  • この本がスゴい!2011

    今年もお世話になりました、すべて「あなた」のおかげ。 このブログのタイトルは、「わたしが知らないスゴは、きっとあなたが読んでいる」。そして、このブログの目的は、「あなた」を探すこと。ともすると似たばかり淫するわたしに、「それがスゴいならコレは?」とオススメしたり、twitterやfacebookやtumblrで呟いたり、「これを読まずして語るな!」と叩いたり―――そんな「あなた」を探すのが、このブログの究極の目的だ。 昨年までの探索結果は、以下の通り。 このがスゴい!2010 このがスゴい!2009 このがスゴい!2008 このがスゴい!2007 このがスゴい!2006 このがスゴい!2005 このがスゴい!2004 昨年から始めたオフ会で、たくさんの気づきとオススメと出会いを、「あなた」からもらっている。目の前でチカラ強くプッシュしてもらったり、物語談義を丁々と続けたり

    この本がスゴい!2011
    schadling
    schadling 2011/12/01
  • 恐怖なしに生きる

    恐怖なしに生きる、そんなことが可能だろうか。 わたしが恐怖を抱いているもの───家族を亡くすことや、健康や職を失うこと、その基盤自体が災害や戦いで破壊される不安から、自由になれるのか。もっと引きよせて、仕事で失敗して降格されるとか、痴漢と間違われるとか、個人情報が悪用されたんだけど人に言えないようなサイトからだから泣き寝入りするしかないとか。肉体的、精神的な打撃への"おびえ"をなくせるのか。 クリシュナムルティは、できるという。 この一冊を賭けて、くりかえし述べている。手記、詳論、対談、インタビュー、手を変え品を変えて同じテーマ「恐怖なしに生きる」ための問いかけを続ける。非常に興味深いことに、アプローチは「怒り」と一緒なのだ。 順番に言おう。クリシュナムルティによると、最初に自問すべきは「恐怖とは何か」「それはどのように起こるのか」なんだと。わたしが何を恐れているかがテーマになるのではなく

    恐怖なしに生きる
    schadling
    schadling 2011/11/04
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