先日、近所の書店で、「考える人」という季刊誌(新潮社)を見つけ、買って帰ってきた。「生誕111年・没後30年記念特集 小林秀雄 最後の日々」と銘打って小林秀雄の特集を組んでおり、昭和54(1979)年の河上徹太郎と小林の最後の対談の再録を中心に構成している。私が思わず買う気になったのは、巻末に河上徹太郎と小林秀雄の座談会の録音のCD-ROMが付いていたからである。小林秀雄の声は、以前にも講演会のテープが発売されていたので聴いていたが、河上徹太郎の声を聴くのは今回初めてであった。 この二人は、言わば、日本における近代批評の草分け的存在である。二人ともボードレール、ランボー、ヴェルレーヌ、マラルメ、ヴァレリー等、フランス象徴派の詩人たちの強い影響下に文筆活動を開始したが、晩年には、日本の歴史や古典に沈潜した。小林秀雄の晩年の代表作は言うまでもなく「本居宣長」であり、河上徹太郎のそれは「吉田松陰