日本在住の米国人作家マイケル・プロンコは、学生たちにアメリカ文学を教えるとき、戸惑ってしまうことがある。それはロバート・フロストの詩「壁直し」を教えるときだ。自由を奪う壁というものは壊すものだと思って生きてきたのに、日本人学生の反応を見ると、彼らは必ずしも「壁」に否定的ではないようで──。 教師の自信を打ち崩そうとするもの アメリカ文学概説の講座を教えていて楽しいのは、学生の回答を読むときだ。日本のマス教育を受けてきた学生たちの回答は概して当たり障りのない、ありきたりなものになりがちである。 女性の詩を読めば、学生たちは女性がいかに抑圧されてきたかを語る。アメリカの詩人、E・E・カミングスの詩を読めば、子供らしい言葉遊びが好きなのだと語る。ケルアックの小説の抜粋を読めば、旅に出たい気持ちが刺戟されるらしい。反戦歌を勉強すれば、「戦争はいけません」が出てくるのは避けがたい。 私は帰りの電車か
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