青春離婚 紅玉いづき Illustration/HERO 「最前線」のスペシャル企画「カレンダー小説」第五弾。数々の恋愛小説を手がけてきた紅玉いづきが“いい夫婦の日”に綴る、不器用な“夫婦(ふたり)”の物語。気鋭のWebコミック作家・HEROによるコミカライズ版『青春離婚』も同日より連載開始! 指先が冷たくて、爪は白さを通り越して青かった。うまく血が通っていないようだった。わたしは紺色のマフラーを口元まで上げて、苛立(いらだ)つように手の中の端末の表面を押した。 スマートフォンの大きな液晶画面はなかなかわたしの冷たい指先に反応せず、苛立ちばかりが募(つの)っていった。こんな気分の時にこんなものにまで拒絶されたくはなかった。スマートフォンからさがる小さな山羊(やぎ)のストラップが所在なげに揺れている。 雨が降り出しそうに暗い、11月の終わり。吹きさらしのバス停でのことだった。 「郁美(いくみ