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サマセット・モーム 作品の検索結果1 - 9 件 / 9件

  • モーム作の小説『手紙』と宮部みゆき作『ソロモンの偽証』の情景描写の違いから情報共有の幻想について。 - アメリッシュガーデン改

    モームが愛した『ラッフルズホテル』のダイニング いわゆる古典が読みにくい理由 古典小説が読みにくい理由に冒頭の情景などの説明描写が長いってことが一つあると思う。とくに海外小説の古典は長いんだ。 例えば、サマセット・モームのような20世紀前半の流行作家でさえ、いわゆる大衆作家でさえ、こうだ。 名作「手紙」の冒頭部分。 『戸外の埠頭には太陽がすさまじく照りつけていた。自動車の流れ、トラックにバス、自家用車にやハイヤリング、それから雑踏する街路を引きもきらず往き来して・・・』 このまま、1000字ほど場面説明の文章が続き、19行目くらいから、やっとこさ、おっとりと登場人物が出てきて、ドアがノックされる。 物語がはじまる予感がするでしょ、しかし、予感だけで主ストーリーはまだまだ。読み手の忍耐を試す描写がまだ続く。 ここで、客が来たことが告げられる。 客のクロスビィ氏が、いかに『筋骨隆々』かとの描写

      モーム作の小説『手紙』と宮部みゆき作『ソロモンの偽証』の情景描写の違いから情報共有の幻想について。 - アメリッシュガーデン改
    • 新生活、始める。── あるいは最良のものを受け取ることについて── - Blue あなたとわたしの本

      エッセイ Blue 30 また引越ししなきゃなんなくなっちゃってさ。 「夏、家にペンキを塗る」に書いた平家に5年とちょっと住んでいたんですけど── いまもまだ居るんですけど── ここに来ることになった理由っていうのはね、その前に借りてた一軒家を大家さんが「つぶして土地を売る」って言いだしてさ、それで越してきたんです。今回はね、いま借りてる平屋の大家さんが「つぶして土地を売る」って言いだしてさ、「またかーい!」みたいな。 こんなややこしい時世のときにややこしいことを言い出すなよとも思ったんだけど── まぁ、しょうがないじゃないですか? 土地も家も大家さんのものなんだしさ。ぐずぐず文句を言ってもしょうがないべ? どうすることもできないことが起こったときって、「必然・必要・ベスト」なんだって僕は考えるようにしています。そうするとさ、「あぁ、やっぱりあれがベストのタイミングだったんだなぁ」ってあと

        新生活、始める。── あるいは最良のものを受け取ることについて── - Blue あなたとわたしの本
      • ダニエル・キイス 著『アルジャーノンに花束を』より。これを読まないまま終わる人生を歩んではいけない。 - 田舎教師ときどき都会教師

        医者には向いていないと自覚し、作家になろうと思い定め、生活費を得るために教師の資格をとって教職についた。知的障害児の教室で教える仕事も引き受けて、この教室で、あの少年と出会った。授業のあと、少年はキイス先生のもとにやってくるとこう言った。「先生、ぼくは利口になりたい。勉強して頭がよくなったら、ふつうのクラスに行けますか」この言葉が『アルジャーノンに花束を』をこの世に送り出す大きなステップとなった。 (ダニエル・キイス『アルジャーノンに花束を』ハヤカワ文庫、2015) こんばんは。引用は、訳者である小尾芙佐さんのあとがきより。教員だったんですね、ダニエル・キイス(1927-2014)は。読み始めたときも、読んでいる途中も、読み終えてからも、教員こそが読むべき一冊だ(!)と感じていたので、俄然、親近感が湧きます。Wikipediaで調べたところ《ニューヨークの高校で国語教師を務めつつ、定時制で

          ダニエル・キイス 著『アルジャーノンに花束を』より。これを読まないまま終わる人生を歩んではいけない。 - 田舎教師ときどき都会教師
        • 猪瀬直樹『太陽の男』が三島由紀夫という鏡に映した石原慎太郎、そして映さなかった像 - 石川智也|論座アーカイブ

          猪瀬直樹『太陽の男』が三島由紀夫という鏡に映した石原慎太郎、そして映さなかった像 「作家・石原」と「政治家・石原」 分けて論じることはフェアかアンフェアか 石川智也 朝日新聞記者 作品は作者に還元できない。作品の価値と作者の人格は別ものである。 そう心得ていたにしても、作者への負の念があまりに大きい(あるいは逆に強く好感を抱いている)場合、その作品を冷静に公平に批評することは可能なのか。そんな古典的な難題に向き合わされた数週間だった。 昨年2月1日に永眠した石原慎太郎の一周忌に合わせ、猪瀬直樹氏による評伝『太陽の男 石原慎太郎伝』(中央公論新社)が刊行された。石原とは都知事時代に一度か二度、記者会見に出席した程度の接点しかないが、正直なところ悪しき先入観しかなかった。本書を読み、自分の中の石原像は少なからず改変を余儀なくされた。と同時に、これまで石原に抱いてきた違和感の正体も見極められたよ

            猪瀬直樹『太陽の男』が三島由紀夫という鏡に映した石原慎太郎、そして映さなかった像 - 石川智也|論座アーカイブ
          • 「俳句は未来の文学形式」電子俳人の愛に溢れた俳句が意味するもの | 文春オンライン

            『恋するアダム』(イアン・マキューアン 著/村松潔 訳)新潮クレスト・ブックス 主人公の恋路を邪魔するAIアダムは、この物語の悪役といってもよい。だが彼がHAL9000やターミネーターと一線を画すのは、想い人の気を引こうとこんな俳句を詠んでしまうところだ。「彼女の愛に満ちたまなざしに/全宇宙が含まれている。/宇宙を愛そう!」 海外で盛んに作られているHAIKUは、鈴木大拙が禅と結びつけて紹介したことから、日本人の考える自然観照をベースにしたものとは異なり、観念的、抽象的な内容が多い。それにしてもこのアダムの処女作はこちらが恥ずかしくなるが、驚くべきことに彼は「切字」という俳句独自の様式もマスターしようと張り切り、実際、作中で彼の作品はだんだん上達していく。なにより興味深いのは、その俳句論だ。アダムによれば「俳句は未来の文学形式」。なぜか。文学のほとんどは人間の愚かさ、残酷さに根差したもので

              「俳句は未来の文学形式」電子俳人の愛に溢れた俳句が意味するもの | 文春オンライン
            • 9割の人が知らない「長い古典を最後まで読めない」なら知るべき2つのこと

              ブログ「読書猿 Classic: between/beyond readers」主宰。「読書猿」を名乗っているが、幼い頃から読書が大の苦手で、本を読んでも集中が切れるまでに20分かからず、1冊を読み終えるのに5年くらいかかっていた。 自分自身の苦手克服と学びの共有を兼ねて、1997年からインターネットでの発信(メルマガ)を開始。2008年にブログ「読書猿Classic」を開設。ギリシア時代の古典から最新の論文、個人のTwitterの投稿まで、先人たちが残してきたありとあらゆる知を「独学者の道具箱」「語学の道具箱」「探しものの道具箱」などカテゴリごとにまとめ、独自の視点で紹介し、人気を博す。現在も昼間はいち組織人として働きながら、朝夕の通勤時間と土日を利用して独学に励んでいる。 『アイデア大全』『問題解決大全』(共にフォレスト出版)はロングセラーとなっており、主婦から学生、学者まで幅広い層か

                9割の人が知らない「長い古典を最後まで読めない」なら知るべき2つのこと
              • 月と六ペンス - いつかこの日々を思い出してきっと泣いてしまう

                サマセット・モームの『月と六ペンス』を読了。 「この作者は他の作品も読まなきゃならない」。この作品を半分ほど読み終えた私は、そんな思いに駆られ、すぐさま同じ訳者により手掛けられた2作品を注文した。モーム作品を読むのは初めてだったが、すぐさま彼の虜となったわけだ。 私とこの本との出会いは小さな書店であった。その中のことさら小さな一角に、海外文庫コーナーが設けられていた。そこに平積みされていたこの一冊。今読まなければならないという思いが、なぜか胸に沸き上がってきたのである。 読み始めからその平明な文体に好感を持つ。比喩や表現もウィットに富んでおり、人物の描き方も巧みで、物語にも惹き込まれていく。その総合力の高さに、私はまたひとり好きな作家に巡り会えたのだということを悟るにいたった。 調べてみると、やはり偉大なる作家であった。おそらくはこれまでもその名を見たことがあっただろう。それでも私の印象に

                  月と六ペンス - いつかこの日々を思い出してきっと泣いてしまう
                • 『ラブイユーズ』バルザック|散りばめられた人生の教訓と重層的な人間模様 - 書に耽る猿たち

                  『ラブイユーズ』オノレ・ド・バルザック 國分俊宏/訳 ★ 光文社[光文社古典新訳文庫] 2022.12.3読了 バルザック著『ゴリオ爺さん』を15年ほど前に読んだ時、実は最後まで読み通せなかった。おもしろさを感じられなかったからなのか、当時はまだ翻訳ものを上手く読みこなせなかったからなのか不明だ。だからバルザックについては苦手意識があった。敬愛するサマセット・モームが天才だと認めたバルザックを私は理解できないのかと、少し残念な気分を常に持っていた。 時はフランス革命直後、ナポレオン帝政から復古王政に至る時代である。この頃のフランスは動きがあってやはりおもしろい。タイトルの『ラブイユーズ』というのはある女性のあだ名である。確かに作中では稀代の悪女でなかなかの個性を放つが、ラブイユーズを中心に物語が進むわけではない。主人公といえるのは、軍人フィリップと画家ジョセフの兄弟だと思う。真のタイトルは

                    『ラブイユーズ』バルザック|散りばめられた人生の教訓と重層的な人間模様 - 書に耽る猿たち
                  • ジゴロとジゴレット - いつかこの日々を思い出してきっと泣いてしまう

                    サマセット・モーム『ジゴロとジゴレット』読了。 私の中で突如始まったモームブーム。この作品を読み終えても尚、その勢いは留まることを知らない。 今作は訳者による短編小説の傑作選。前評判通り、一篇の駄作もなく、どれも素晴らしい作品であった。退屈するまもないうちに一気に読了。モームは短編の名手とも言われる。その冠に偽り無しだ。 モームの文体は相変わらず私好みで、短編作品でも物語の面白さは冴え渡っていた。ただ二作目にしてモーム最大の美点は、その人物描写の巧みさにあるのではないかと思うに至った。 とにかく人物が生き生きと描かれている。微妙な所作や醸し出す雰囲気等を文章化するのが抜群に上手く、それによりありありと人物が想像できる。あの繊細なニュアンスは文章ではこのように表現すればよかったのか、と何度も気づきを与えられた。 特に女性を描くのがうまい。やはり良い作家ほど人間観察力が優れているのだろう。物語

                      ジゴロとジゴレット - いつかこの日々を思い出してきっと泣いてしまう
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