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土記の検索結果1 - 40 件 / 67件

  • 土記:ウクライナ即時停戦再論=伊藤智永 | 毎日新聞

    <do-ki> 国際法も人権も踏みにじるロシアのウクライナ侵攻から1年半。米紙ニューヨーク・タイムズが先週、両軍のこれまでの死傷者は計50万人近くに上るとの推計を報じた(本紙21日付朝刊国際面)。平均して毎日900人以上だ。 内訳は、ロシア側が死者12万人、負傷者17万~18万人。ウクライナ側が死者7万人、負傷者10万~12万人。兵力見積もりは、ロシアが民間軍事会社を含めて約133万人、ウクライナが民兵組織も加えて約50万人。とするとウクライナは、すでに兵力の3分の1が死傷していることになる。 ゼレンスキー大統領は西側諸国に「もっと戦闘機、戦車、弾をくれ」と要求するが、そもそも兵器を使って戦える兵士が足りるのか。18~60歳の男性は徴兵の対象で、原則出国禁止。最近は軍隊経験のない病弱な50歳代でも、前線へ送られているようだ。

      土記:ウクライナ即時停戦再論=伊藤智永 | 毎日新聞
    • 土記:安倍さんだったら症候群=伊藤智永 | 毎日新聞

      <do-ki> 知る人ぞ知る政界のタニマチ(酒食をおごる大金持ち)が、退陣後の安倍晋三元首相を高級料亭で慰労したそうな。「元秘書官たちも連れて行きたい」と主賓が希望し、歴代最長政権を支えた名だたる官邸官僚たちも陪席した。 うたげの後、タニマチ氏抜きで「チーム安倍」の記念写真を撮ったら、1人がさっと列を離れ、他もうつむいたり、そっぽを向いたり、正面を向いているのが安倍氏だけの変な写真になった。 「仲悪かったんだね。個別に安倍さんとつながっていたんだ」

        土記:安倍さんだったら症候群=伊藤智永 | 毎日新聞
      • 土記:憲法改正に必要なのは=伊藤智永 | 毎日新聞

        <do-ki> 憲法記念日の3日、憲法改正に関する各紙世論調査の数字は一見バラバラだった。単純に改憲賛成を比べると、毎日新聞の27%に対し、読売新聞では63%。回答者が社論の違いに合わせたのでは、といった勘ぐりは誤りだ。質問を子細に読み比べると、むしろ明確な世論の姿が立ち現れる。 読売は、単刀直入に…

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        • 土記:岸田メシ、うまいのか=伊藤智永 | 毎日新聞

          <do-ki> 県議会議長だった故人の家で、大掃除を手伝ったことがある。事務所代わりだった広い酒蔵に、ゆうに1000を超える湯飲みや食器が何台もの棚にぎっしり収まり1週間かけても片付かなかった。 往年は選挙の度に千客万来。常に酒と食べ物を用意し、自由に飲み食いさせていたという。手伝ってくれる近所の人たちに、三度の食事も出さねばならない。 資金は元議長の老妻が、地場産品の商いで捻出。「稼いだお金は全部選挙に使っちゃった。赤ら顔であちこちの候補者宅を渡り歩き、くだを巻く人たちにはうんざり」とこぼしていたそうだ。

            土記:岸田メシ、うまいのか=伊藤智永 | 毎日新聞
          • 土記:ウクライナ即時停戦案=伊藤智永 | 毎日新聞

            <do-ki> ジャベリン、スティンガー、ネプチューン、ハープーン……。夏ごろ、ウクライナ戦争で「活躍」する兵器の名前を訳知りに語るにわか軍事オタクがずいぶんいたものだが、冬を迎えてめっきり見かけなくなった。一方、軍事専門家や国際政治学者は、口をそろえて戦争の長期化を淡々と説く。 6月、別のコラムに「ゼレンスキー氏(ウクライナ大統領)は英雄か」という見出しで、ロシアが200%悪いにしても、ウクライナは100%正しいか、と疑問を呈したら、読者から頂いた手紙は賛否半々だった。応答のつもりで7月、「記者の目」に同じ見出しで再論したところ、今度は明確な異論は1通だけだった。 侵攻される1年前から、ゼレンスキー氏が「クリミア奪還」「ロシアの武力侵攻に対抗」「ミンスク合意Ⅱ(ウクライナ東部紛争の和平合意)完全破棄」と繰り返し表明していた強硬姿勢は、今やよく知られている。米国流の自由と民主主義の価値観を

              土記:ウクライナ即時停戦案=伊藤智永 | 毎日新聞
            • 土記:ジャニーズ帝国と沈黙=伊藤智永 | 毎日新聞

              <do-ki> ジャニーズタレントの顔と名前も一致するかおぼつかない者にとって、事務所創業者の性加害事件は、その期間・規模・内容に今更驚くばかりだが、「マスメディアの沈黙」も温床だったと指弾されれば、取材分野は違っても記者の一人として考え込まされる。 芸能界は特殊だからとか、人の性的指向に口は出せないといった遠慮を超えて、芸能メディアには打算やそんたくがあっただろう。それでも、出版メディアは創業者の異常性について半世紀前から何度も警告していた。新聞は追及しなさすぎたが、裁判の判決はその都度報じている。しかし、それでは事件を止められなかった。 …

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              • 土記:サイードはもういない=伊藤智永 | 毎日新聞

                <do-ki> 米ハーバード大学のパレスチナに連帯する学生団体が、イスラム組織ハマスの攻撃は全面的にイスラエルに責任があるとの声明を出したら、30以上の学生団体が賛同した。これに大富豪の企業経営者らが「名前を明かせ。彼らを絶対に雇わない」と反発。政治家も同調する騒ぎとなり、大学当局はハマスのテロ非難声明を出すなど火消しに追われた。9・11米同時多発テロの後、イスラム非難一色になった世相をほうふつさせる。 米世論調査機関「ピュー・リサーチ・センター」によると、米国人全体ではパレスチナよりイスラエルへの好感度が高いが、30歳未満の成人では近年、その傾向が明らかに逆転していたそうだ。

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                • 土記:「黒い雨」の科学と政治=青野由利 | 毎日新聞

                  <do-ki> 「十分な科学的知見に基づいているとは言えない」。厚生労働相の加藤勝信さんの言葉に、えっ?と思った。 75年前、広島への原爆投下後に降った「黒い雨」をめぐる訴訟。国の援護区域外で雨を浴びた住民が勝訴した広島地裁判決に、控訴すると表明した時のコメントだ。 何事につけ根拠は大事。でもこれは、国が胸を張って科学的根拠を要求できる事例なのだろうか。 ここに至る経緯は長い。終戦直後、広島管区気象台の宇田道隆らが住民の聞き取り調査により黒い雨の降雨域を楕円(だえん)で描く。これを基に国が大雨域だけを援護対象区域に指定したのが1976年だ。

                    土記:「黒い雨」の科学と政治=青野由利 | 毎日新聞
                  • 土記:安倍派バブルの崩壊=伊藤智永 | 毎日新聞

                    <do-ki> 派閥の会長でもないのに、個人で政治資金パーティー収入が突出している現役議員と言えば、自民党の武田良太元総務相(二階派事務総長)と地域政党「新党大地」代表の鈴木宗男参院議員が双璧だろう。鈴木氏に話を聞いた。自民党時代は、小渕恵三、橋本龍太郎両元首相が会長の平成研究会(現茂木派)幹部だった。 「政治家個人のパーティーは、支援者に広く薄く参加してもらう機会。政党のパーティーも政策を訴える場。どちらも意味があるが、派閥まではやりすぎだ」

                      土記:安倍派バブルの崩壊=伊藤智永 | 毎日新聞
                    • 土記:マイクを切ったのは=伊藤智永 | 毎日新聞

                      <do-ki> 水俣病患者・被害者らの発言中、環境省職員によってマイクの音が切られた出来事から2週間。ずっと考えている。自分は何に苦いものを感じたのだろう。 5月1日は、68年前に水俣病が公式確認された日。熊本県水俣市で営まれた犠牲者慰霊式に伊藤信太郎環境相も出席し、患者・被害者との懇談に臨んだ。 思い浮かんだのは、ある官僚の死である。1990年12月、当時の環境庁長官が11年ぶりに水俣病の現地視察へ向かった日、環境庁事務方ナンバー2の山内豊徳氏が東京の自宅で自殺した。 患者・被害者が行政や企業の責任を問う裁判で、東京地裁が和解を勧告。熊本県や企業は応じようとしたのに、国は拒んだ。山内氏は責任者として弁明に追われ、長官の現地入りも回避すべく奔走していた。「板挟みになったか」と報じられ、是枝裕和氏が映画監督になる前、テレビドキュメンタリーにしたことがある。

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                      • 土記:世襲政治が極まると=伊藤智永 | 毎日新聞

                        首相の通算在職日数が憲政史上最長となり、記者団の質問に答える安倍晋三首相(当時)=首相官邸で2019年11月20日、川田雅浩撮影 <do-ki> 安倍晋三氏がもう一度首相になろうと決意したのは、第1次内閣を1年で放り出してから5年後。身内や後援者ですら「まだ早い」と止めたのに、2012年自民党総裁選に名乗りを上げ、下馬評を覆して逆転勝ち。歴代最長政権はそこから始まった。 常識では推し量れない再登板への執念。安倍氏は祖父・岸信介元首相の無念を、何度も自らに言い聞かせていたに違いない。繰り返し読んでいた原彬久編「岸信介証言録」で、岸は語っている。 「もう一遍私が総理になってだ、憲法改正を政府としてやるんだという方針を打ち出したいと考えた。ひそかに政権復帰を思ったことは随分ありましたよ」

                          土記:世襲政治が極まると=伊藤智永 | 毎日新聞
                        • 土記:松野官房長官に尋ねたい=伊藤智永 | 毎日新聞

                          <do-ki> 関東大震災後の東京再建はめざましく、6年半後には帝都復興祭が行われ、諸外国を驚嘆させた。ところがその15年後、東京は米軍の大空襲により再び廃虚と化す。天災から戦災(人災だ)へ。その間の短さは何を意味するか。 復興祭の約半年後、震災を耐え抜いた東京駅で浜口雄幸首相が右翼に襲われた。それを皮切りに1930年代、東京ではテロやクーデターが相次ぐ。並行して大陸への侵攻が進められ、日中戦争の泥沼化は日米開戦を招いた。 いかに国家や民族の大義を掲げようと、戦争は究極のところ、日常からいきなり兵士に仕立てられた普通の人々が、明日から人殺しを命じられる権力の強制である。人々が「自分も人を殺せる」と信じるには、日常の中で暴力への拒否感を摩滅させる「訓練」期間が必要だったに違いない。

                            土記:松野官房長官に尋ねたい=伊藤智永 | 毎日新聞
                          • 土記:戸籍、廃止します=伊藤智永 | 毎日新聞

                            <do-ki> 戸籍を廃止する――。6月にまとめる政府の少子化対策で、岸田文雄首相が文字通り異次元の秘策を検討している。少子化が止まらない原因の一つに、日本は欧米と比べ、婚外子が極端に少ない問題がある。50%を超えるフランス、スウェーデンに対し、日本はわずか2%余り。戸籍制度に基づく社会の差別意識が壁になっている。国民に異次元の対策へ踏み出すと理解させるため、いっそ戸籍そのものをなくすサプライズだ。 というのはエープリルフールです。でも、その程度の腹すらくくれないなら、初めから「異次元」などと言わない方がいい。

                              土記:戸籍、廃止します=伊藤智永 | 毎日新聞
                            • 土記:森喜朗氏が語るとき=伊藤智永 | 毎日新聞

                              <do-ki> 今や岸田文雄政権がどうなるかより、自民党はどうなるのかに人々の関心はある。「悪夢のような民主党政権」と繰り返した安倍晋三元首相の言葉が、ブーメランとなって自民党に返ってきた。 旧統一教会問題や政治資金パーティー問題が安倍氏の死後、釜のフタが開いたように噴き出したのは偶然と思えない。「安倍さんが生きていれば」と嘆くファンもいるだろうが、その安倍氏本人がフタだったなら、話は逆だ。 安倍時代は派手なスローガンと外交、総裁選を含む毎年の選挙で人々を飽きさせない「イベント政治」だった。祝祭気分を楽しんだ人も多かったから、辞める時は支持率が驚くほど上昇し、「安倍さん、ありがとう」の感謝ムードで写真集も売れた。

                                土記:森喜朗氏が語るとき=伊藤智永 | 毎日新聞
                              • 土記:池田大作氏の思い出=伊藤智永 | 毎日新聞

                                <do-ki> 亡くなった池田大作創価学会名誉会長に一度だけ会ったことがある。当時30代。困難を承知で池田氏への直接取材をあれこれ仕掛けていたら、本紙コラムニストの故岩見隆夫氏が聞き手となるのを条件に、インタビューが実現した。名刺を渡すと「ずいぶんご熱心で」と言われ、副会長の一人が「一生の勲章ですね」と笑った。握った手はとても柔らかかった。 担当でもない創価学会を取材し始めたのは、それより10年以上前。担当だった公明党取材に行き詰まったからだ。当時の故市川雄一書記長は、朝日新聞、共同通信、NHK以外は冷遇すると広言。苦し紛れに支持母体へ回り込んだのだ。記者に限らず誰にでも厳しく、若手有望株だった現在の山口那津男代表や北側一雄副代表への指導は特にきつかった。

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                                • 土記:映画の王国ジョージア=伊藤智永 | 毎日新聞

                                  <do-ki> モスクワから南へ車で24時間。カフカス山脈を越えた黒海東岸のジョージア。人口400万人の小国に、ウクライナ戦争が始まって以来、昨年だけでロシア人11万人以上が逃げ込んだ。 はらだたけひでさん(68)が暮れに3年ぶりで首都トビリシを訪れたのは、外相から「ジョージアの友人」賞を受けるためだ。 44年間勤めた東京・神保町の岩波ホール(昨年7月閉館)で各国映画を紹介してきたが、中でもジョージアの映像世界に魅せられ、肩入れしてきた。名作を集めて昨年、特集映画祭を企画。4週間で1万人以上が見た。日本とジョージアの国交30周年事業にも協力し、授賞は感謝の印という。

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                                  • 土記:広島サミット再論=伊藤智永 | 毎日新聞

                                    <do-ki> 広島県加茂村(現福山市)出身の井伏鱒二は、最初の東京オリンピックがあった翌年、戦後20年で初めて原爆を小説にした。高度経済成長の繁栄まっただ中。被爆者の日記や証言を基に書いた。 「ノートを取っていると、話している人が息をのみ込んだ。3度くらいあった。よほど得体の知れない怖さがあったんだろう」 「その人は軍医さんで、20年たってもウジ虫が耳たぼ食ってる。ゴソゴソ音が聞こえる。幻聴だけは昔のままだって。耳たぼは食われてなくなっているのに」

                                      土記:広島サミット再論=伊藤智永 | 毎日新聞
                                    • 土記:ドンのトンネル政治=伊藤智永 | 毎日新聞

                                      <do-ki> 地元で「青木トンネル」と呼ばれていた。高速道路・山陰自動車道の島根県出雲―宍道IC間にある仏経山トンネル。2000年代初め、そこから東へ延びる区間の工事は、青木幹雄氏(当時自民党参院幹事長)が、かつて秘書として仕えた竹下登元首相(00年死去)から引き継いだ地元土建会社に細かく割り振られていた。 どの入札も落札率98%。参加業者は入札の5年前から、自民党の政治資金団体「国民政治協会」と県支部に毎年献金し、総額は判明分で1億6000万円超。協会は、一部有力議員に迂回(うかい)献金を仲立ちするトンネルでもあった。

                                        土記:ドンのトンネル政治=伊藤智永 | 毎日新聞
                                      • 土記:「安倍回顧録」の読み方=伊藤智永 | 毎日新聞

                                        <do-ki> もう書いてもいいだろう。2月に出た「安倍晋三回顧録」(中央公論新社)は期待外れだった。故人の語りがふんだんに収録され、ファンの感激は理解できる。でも、大半は聞いたことある主張の総集編である。本当はこんな人だったのか、こんな真相があったのか、といった発見は乏しい。 オーラルヒストリー(口述史)の金字塔「岸信介証言録」(毎日新聞社刊・現中公文庫)を編んだ政治学者の原彬久(よしひさ)さん(83)に頼んで読んでもらった。「力作だけど、整然としすぎていますね。私とは手法も狙いも違う」。我が意を得たりと相づちを打った。 「安倍回顧録」のミソは、「北村滋監修」の特異さにある。元警察官僚の北村氏は、第1次内閣の首相秘書官、第2次内閣以降も内閣情報官や国家安全保障局長として終始仕えた側近中の側近。

                                          土記:「安倍回顧録」の読み方=伊藤智永 | 毎日新聞
                                        • 土記:死刑賛成8割の国で=伊藤智永 | 毎日新聞

                                          <do-ki> 秋葉原無差別殺傷事件(2008年)を起こした加藤智大死刑囚(39)の刑が執行されたのは7月26日、安倍晋三元首相銃撃事件から18日後である。昼のニュースで知った時、とっさに安倍氏を襲った山上徹也容疑者(42)の運命を想像した人は少なくないのではないか。事件の様相は全く異なっていても、2人の像は、世代や境遇など重なり合う点が多い。 もう一つ、はっとしたことがある。東京・埼玉連続幼女誘拐殺人事件(1988~89年)の宮崎勤死刑囚の刑が執行されたのは、秋葉原事件の9日後だった。やはり事件の内容は全く違うが、宮崎死刑囚を巡っては当時、社会に「オタクバッシング」が起きた。秋葉原は「オタクの聖地」。偶然だとしても落ち着かない。

                                            土記:死刑賛成8割の国で=伊藤智永 | 毎日新聞
                                          • 土記:世界が見た三つの葬儀=伊藤智永 | 毎日新聞

                                            国葬会場の式壇に安置された安倍晋三元首相の遺骨(左)と議員バッジなどの遺品=東京都千代田区の日本武道館で27日、宮武祐希撮影 <do-ki> この1カ月、世界は三つの葬儀を立て続けに見た。 ゴルバチョフ元ソ連大統領は市民数千人に見送られ、国家の栄誉とは無縁だった。エリザベス英女王の目もあやな一大ページェント(野外劇)には、世界中が魅せられた。そして安倍晋三元首相の国葬。賛否論争に明け暮れ、本番は騒がしく味気なく過ぎた。 君主も広い意味での政治リーダーである。「世界のアベ」を含む三者三様の葬送風景は、政治における業績と評価、国家の命運と安定、国民がまとまる時の条件と形について考えさせる。 モスクワの閑静、ロンドンの荘厳美麗は、好対照が際だった。

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                                            • 土記:五輪の上乗せリスク=青野由利 | 毎日新聞

                                              <do-ki> IOC(国際オリンピック委員会)って、いったいナニモノ? 新型コロナウイルスと五輪をめぐる一連の幹部の発言で、大いなる疑念が芽生えた人は多いと思う。かくいう私もその一人だ。 先週の記者会見で、東京に緊急事態宣言が出ていても開催するか問われ、「答えはもちろんイエス」と答えたのはコーツ副会長。 五輪実現には「犠牲を払わなければならない」と言ったのはバッハ会長。日本国民に向けたものではなかったようだが、そう受け取られてしまうのは、これまでの発言のなせる業だろう。

                                                土記:五輪の上乗せリスク=青野由利 | 毎日新聞
                                              • 土記:目白御殿焼失=伊藤智永 | 毎日新聞

                                                田中角栄元首相の旧邸宅で起きた火災で焼けた建物=東京都文京区で2024年1月9日午前9時47分、本社ヘリから宮武祐希撮影 <do-ki> 東京・目白の田中角栄元首相邸が焼失した。線香の失火が疑われているという。気の毒な災難にお見舞いの同情を禁じ得ない。 それにしても自民党が政治資金パーティー裏金事件に窮する折も折、よりによって金権政治の牙城だった歴史的建造物が灰じんに帰するとは、できすぎた暗合ではないか。あくまで虫の知らせの類いだが、これはマツリゴトの神様が、何か大事なサインを送っているのではあるまいか……。 為政者は、居宅の地名で呼ばれてひとかどの権力者となる。竹下登元首相が東京・代沢の旧佐藤栄作邸に住み続けたのは、師と仰ぐ大宰相の名跡を継いだ証しのためだった。首相辞任後の岸信介元首相が静岡県御殿場市に邸宅を新築したのは、隠居後も神奈川県大磯町に君臨した政敵・吉田茂元首相が死去した直後だ

                                                  土記:目白御殿焼失=伊藤智永 | 毎日新聞
                                                • 土記:だからロシアと外交を=伊藤智永 | 毎日新聞

                                                  ロシアから帰国後、記者団の取材に応じる日本維新の会の鈴木宗男氏=参院議員会館で2023年10月5日午後4時54分、竹内幹撮影 <do-ki> まだ首相官邸が戦前からの古い建物(改装して現在は首相公邸)だった頃、首相や官房長官が在室中、番記者はドアの前の廊下で来客の出入りを見張っていた。 ある日、野中広務官房長官(小渕恵三政権)の複数いる秘書官のうち1人が、そっと部屋を出た。いつもの重厚な黒の書類カバンでなく、無地の小さい紙袋を手に提げているのが気になり、後を追う。話しかけても上の空である。玄関を出るとき「ついて来ないでください」と軽くにらまれた。普段と様子が違う。尾行したら、議員会館の一室に消えた。 数週間後、官邸に現れたことのない野党議員が官房長官室に入った。北朝鮮へ行った報告だという。ピンときた。秘書官が訪ねた部屋の議員じゃないか。すると、あの紙袋の中身は……。

                                                    土記:だからロシアと外交を=伊藤智永 | 毎日新聞
                                                  • 土記:もう一つの8月6日=伊藤智永 | 毎日新聞

                                                    <do-ki> 明日は広島原爆忌。地元選出の首相が式典で「被爆の実相」「記憶の継承」「核廃絶」など正しい決まり文句を並べ、主要7カ国首脳会議(G7広島サミット)開催の政治的意義を誇るのだろう。 地霊という言葉がある。土地の記憶がもたらす霊感によって、今と向き合い、未来の可能性を切り開くと考える。広島の地霊は変質した。いや、衰弱した。 「もっと爆弾よこせ」と威嚇する外国の戦時大統領が来訪すれば歓迎し、原爆マンガの古典を教育の場から排除し、広島湾の向こうに使用済み核燃料の保管場所が造られようとしてもどこか人ごと。地霊は政治の要請で次々と上書きされてきた。政治と距離を置こうとすると、かえって政治の野蛮な力に組み敷かれていく。

                                                      土記:もう一つの8月6日=伊藤智永 | 毎日新聞
                                                    • 土記:安倍拉致3原則の限界=伊藤智永 | 毎日新聞

                                                      <do-ki> 20年ぶりの日朝首脳会談はあるか。岸田文雄首相は北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記に「共に新しい時代を切り開くため、条件を付けず直接向き合いたい」と呼びかけてきた。2月、総書記の妹の金与正同党副部長が「関係改善の新たな政治決断をするなら、新しい未来を共に切り開ける」と異例の談話で応じた。その後、表の応酬はあっても、水面下でただならぬ動きが進んでいる模様だ。 27日、国会内の大会議室で「拉致問題の行き詰まりを破るカギは何か」を考える集会があった。ロシア近代史と現代朝鮮が専門の和田春樹東京大学名誉教授(86)が呼びかけ、国会議員や識者、報道関係者ら100人以上が参加。

                                                        土記:安倍拉致3原則の限界=伊藤智永 | 毎日新聞
                                                      • 土記:岸田さんにお薦めの一冊=伊藤智永 | 毎日新聞

                                                        <do-ki> 首相が休暇の前に書店で本を買い込み、その中の数冊だけ書名を公表すれば、単なる趣味の問題とは受け取られない。岸田文雄氏は昨年冬もこの夏も、村上春樹氏の小説を選んだ。ファンだったとは意外、大衆性を印象づけたいのかな、という素直な見方をよそに、政界では「早稲田愛のアピールだよ」と解説される。 首相と作家は共に早稲田大学卒。一方で首相は、自民党最大派閥の安倍派に依然にらみを利かせる森喜朗元首相、第3派閥・茂木派の参院グループに「当面は岸田しかいない」と遺言したとされる故青木幹雄元官房長官から、早大OBの縁で支持を取り付けてきた。人気作家の話題作も、政権基盤固めの思わせぶりな符丁というわけだ。こじつけすぎ?かもしれない。だとしたら岸田さん、本当にハルキストなんですか。

                                                          土記:岸田さんにお薦めの一冊=伊藤智永 | 毎日新聞
                                                        • 土記:ロシア的人間=伊藤智永 | 毎日新聞

                                                          <do-ki> 「ロシアは今日、世界の話題である。人類の未来とか、世界の運命とか、人間的幸福の建設とかいう大きな問題を、人はロシアをぬきにしては考えることができない。肯定的にせよ、否定的にせよ、誰もがロシアに対して態度を決定することを迫られている」 最近の文章のようだが、書かれたのは1953年1月。「ロシア的人間」という本の序文である。3月スターリン没。7月の朝鮮戦争休戦後、世界中に社会主義国が拡大した。とはいっても、同書が論じるのは政治ではない。 著者の井筒俊彦(14~93年)は、30余の言語に精通した世界的イスラム学者。実は若い頃、ロシア文学に熱中し、終戦直後の慶応大学で何年も講義していた。

                                                            土記:ロシア的人間=伊藤智永 | 毎日新聞
                                                          • 土記:コロナも原発も=青野由利 | 毎日新聞

                                                            オンライン形式で記者団の質問に答える岸田文雄首相=首相官邸で2022年8月22日午後7時25分、竹内幹撮影 <do-ki> 岸田文雄首相がいきなりかじをきった。新型コロナ対策だけでなく、原発政策までも。 そのやり方にがっかりした。 両者には共通する課題がある。どちらも、社会経済活動におけるメリットと人の安全や命に関わるリスクがからみあい、ある利益を選ぶことで、別のリスクが高まる点だ。 その場合、政治は対策や政策のメリットとデメリットをよく知った上で、「なぜその政策を選ぼうとしているのか」を国民に説明しなければならない。わかりやすいメリットだけを知らされ、後から「そんなリスクは知らなかった」となっては困る。

                                                              土記:コロナも原発も=青野由利 | 毎日新聞
                                                            • 土記:ハンマーを打つ時=青野由利 | 毎日新聞

                                                              <do-ki> 新型コロナウイルス流行のごく初期、英国のジョンソン首相は緩い対策を打ち出し、批判を浴びた。この時、興味深かったのは、政策の背景として「行動科学」を持ち出したことだ。 社会活動の抑制が早過ぎると人々は続けられなくなる、という理由。緩い政策は、疫学や公衆衛生学の観点からすぐ方向転換されたが、感染症対策に行動科学や心理学の視点も欠かせないのは、その通りだろう。 あるタイミングで政府が発する言葉や政策が、人々の行動をどう左右するか。熟慮されているとは思えないのが日本の現状だ。

                                                                土記:ハンマーを打つ時=青野由利 | 毎日新聞
                                                              • 土記:特捜世直し幻想=伊藤智永 | 毎日新聞

                                                                <do-ki> 東京の某私大で法学部生30人に「リクルート事件って聞いたことある人」と尋ねたら、挙手したのは5人。「内容も知っている人」と聞いたらゼロ。生まれる15年以上前のことだから当然か。 別の事件で、金丸信元自民党副総裁の事務所から東京地検特捜部が巨大な金庫を運び出すニュース映像を見せたら、教室中が息をのみ固まっている。「金丸」の名前を知っていた学生はゼロ。全員が最も若い有権者である。 政治資金パーティー裏金事件は、捜査着手時「リクルート以来の大疑獄」という触れ込みだったが、刑事処分が出た後の風景はだいぶ違う。自民党が長年、広く組織的に腐っていたのに、起訴・略式起訴されたのはほぼ無名の3議員と派閥事務員や秘書だけ。

                                                                  土記:特捜世直し幻想=伊藤智永 | 毎日新聞
                                                                • 土記:オオタカは巣立った=伊藤智永 | 毎日新聞

                                                                  <do-ki> 東京・新宿から電車で15分の住宅街に広がる井の頭恩賜公園で、先ごろ野生のオオタカが1羽巣立った。春、雑木林に架けられた巣でヒナがかえって以来、多い時は十数人の愛鳥家たちが日々、その成長を見守ってきた。 散歩の途中そっと近づき、一緒に黙って高い木のてっぺんの小さな鳥影を探して、ああ今日もいるとうなずき合うのが、いつしか朝の習慣になった。名前も知らない者同士、一つの命の無事を確かめ合うだけの淡い人の輪は、ほどほどの信頼感が好もしい。 取材したら、皇居や明治神宮など都心の小さな森にも、数年前からオオタカやハヤブサが生息しているという。それどころか里山の減少で「準絶滅危惧種」に指定されているオオタカは、都会にジャングルよろしく林立する超高層ビル群を今や格好の営巣地としているらしい。かつて東京上空の覇権を握っていたカラスが、ゴミ出し対策などによって減った後、入れ替わりに猛禽(もうきん

                                                                    土記:オオタカは巣立った=伊藤智永 | 毎日新聞
                                                                  • 土記:もちろん政治判断だ=青野由利 | 毎日新聞

                                                                    <do-ki> 「これは決して政治判断ではなく、専門家の意見もしっかり踏まえた上での判断です」 岸田文雄首相が今週、「ウィズコロナ会見」で述べるのを聞いて、「政治判断」の意味を取り違えているのでは?と思った。 ある対策をとろうとする場合、感染拡大や死者数の増加などのリスクを専門家がデータに基づいて分析し評価する。 その評価を踏まえつつ、一方で社会経済とのバランスを考え合わせ、責任を持って政策決定する。それが「政治判断」ではないのだろうか。

                                                                      土記:もちろん政治判断だ=青野由利 | 毎日新聞
                                                                    • 土記:全数把握どう確保?=青野由利 | 毎日新聞

                                                                      <do-ki> 新型コロナウイルス感染者の全数把握は続けられるのか。医療現場を中心に「もう無理」という声が高まっている。 確かに、多数の項目を含む発生届で全数把握を支えてきた医療現場の負担は大きい。政府の対応も縮小の方向に傾いているようだが、それでいいのだろうか。 と思っていたら、今週の厚生労働省の専門家会合では、かなり議論になったという。 それもそのはず。全数把握は感染者数を示すだけの、ただの数字ではないからだ。

                                                                        土記:全数把握どう確保?=青野由利 | 毎日新聞
                                                                      • 土記:総合的、俯瞰的?=青野由利 | 毎日新聞

                                                                        <do-ki> 「現在の会員が自分の後任を指名することも可能な仕組み」 日本学術会議の会員選出方法について、菅義偉首相が述べたのを聞いて、えっ?と思った。 「指名」といえば特定の人を名指しして決めること。「担当美容師のご指名は?」とか、「首相に指名された人を天皇が任命する」とか。 でも、学術会議はそんなことできないのでは? 確認していたら、昨日の朝刊が詳しく書いていた。おさらいすると、210人の現会員と約2000人の現連携会員が会員候補を推薦し、それを基に、選考分科会、選考委員会が絞り込み、新会員候補のリストを決める。

                                                                          土記:総合的、俯瞰的?=青野由利 | 毎日新聞
                                                                        • 土記:脱ロシアと原発=青野由利 | 毎日新聞

                                                                          <do-ki> 世界を戦慄(せんりつ)させるロシアのウクライナ侵攻。軍事的に中立だったフィンランドも北大西洋条約機構(NATO)加盟に傾いている。 そう聞いて思い出したのは、2013年に北欧のこの国を訪問した時のことだ。 まず向かったのは首都ヘルシンキから高速バスで西へ4時間ほどのオルキルオト島。原発から出る核のゴミの最終処分場「オンカロ」で有名だが、そもそもは原発サイトだ。稼働中の原発2基に加え最新鋭のオルキルオト3号機が建設中で、4号機の計画もあった。 福島の事故後も原発維持・新設の方針は揺るぎないように見えたが、なぜなのか。

                                                                            土記:脱ロシアと原発=青野由利 | 毎日新聞
                                                                          • 土記:宏池会の呪い=伊藤智永 | 毎日新聞

                                                                            <do-ki> 岸田文雄首相が自民党岸田派(宏池会)の解散を表明した。サプライズだったが、最初はいつも通り「検討使(ます)」と歯切れ悪く、総裁なのに他派閥のことは我関せず。3年間で3000万円も収入を隠していたとバレたら、派閥自体なくしてしまう発想は、パソコンをドリルで壊してしまうのと似ている気もする。 あれこれ腑(ふ)に落ちないが、ともあれ綸言(りんげん)汗のごとし。果たしてこれで政権を延命できるのか。逆に命取りになるかもしれない。

                                                                              土記:宏池会の呪い=伊藤智永 | 毎日新聞
                                                                            • 土記:女王の二つの身体=伊藤智永 | 毎日新聞

                                                                              <do-ki> 国のかたち、とは、はて何か。「形」と書けば、地図上の赤い曲線が思い浮かぶが、平仮名にした途端、つかみどころがない。 エリザベス英女王の国葬に人々が抱いた名状しがたい感銘とは、日ごろは見えない「国のかたちを目にした」という非日常感だったのではないだろうか。 沿道からもひつぎが見えるように作られたガラス張りの霊きゅう車は、他の葬儀でまねしたら奇妙どころか悪趣味に違いない。それが女王ともなれば、死してなお我が亡きがらを世に見てもらうのだ、という君主たる者の強い遺志を示す装置に変えてしまう。 女王には身体が二つある。人として寿命を迎える自然的身体と、国のかたちを体現し、死滅することなく継承される政治的身体と。そんな連想が頭をよぎる。

                                                                                土記:女王の二つの身体=伊藤智永 | 毎日新聞
                                                                              • 土記:抗体をめぐる混乱=青野由利 | 毎日新聞

                                                                                <do-ki> 今月、新型コロナウイルスの集団感染が発生した東京都新宿区の小劇場。多くの人が、えっ、と思ったのは「体調が悪かったが、抗体検査で陰性だったので、出演した」という感染者の話だろう。 おさらいすると、抗体は病原体などに対抗して免疫細胞が作り出す物質。「抗体陰性」が示すのは大きく分けて次のいずれかだ。 「過去に感染したことがなく、今も感染していない」「現在感染しているが、抗体は後から増えるので検出されない」「過去に感染したことがあるが、抗体は検出できなくなっている」

                                                                                  土記:抗体をめぐる混乱=青野由利 | 毎日新聞
                                                                                • 土記:3人のE・H・カー=伊藤智永 | 毎日新聞

                                                                                  <do-ki> 歴史って何? これは悪魔の問いである。大河ドラマや三国志やローマ人の物語に夢中になっている最中、この疑問は浮かばない。楽しむ自分に疑いが兆すと、悪魔がささやく。答えはない。私って誰? 答えられますか。 E・H・カー「歴史とは何か」の新訳が昨年、60年ぶりに出た。昭和の大学受験生が一度は手に取り、ほぼ挫折したアレだ。再挑戦しても答えは変わらない。歴史とは「現在と過去との尽きることを知らぬ対話」「過去は現在の光に照らして初めて理解できる」。ふむ。でもそれって、現在とは何か、の言い換えじゃないの。 英国の外交官だったカーは40代で学者に転身。第二次大戦が始まると、情報省対外広報局長、次に名門紙「タイムズ」論説委員として論陣を張る。同時代史を大胆に論評し、影響力はあるが敵も多いお騒がせ言論人だった。

                                                                                    土記:3人のE・H・カー=伊藤智永 | 毎日新聞