「サン=テグジュペリ」,著者;稲垣直樹,清水書院(Century Books 人と思想 109),1992.3.31,ISBN 4-389-41109-8 新書判としては厚手に属します。内容は、エピソードを多く盛り込んだ略歴に近い伝記に、それぞれの時点で書かれた作品の要約と解説。つまり、純然たる伝記でもなければ、作品だけを見つめた解説でもない、中間的な路線をねらったものです。この狙いは成功し、読み易い作品案内に仕上がっています。 解説を貫く主軸は「円環の時間と直線の時間」。ニーチェのそれとは少し異なる永劫回帰の思想が底流にあります。進歩と計量化の対象となる「直線の時間」から見れば、「遅れてきた貴族の子」であるサンテックスは時代遅れの象徴ですが、この作品は、彼を円環の時間に生きる「子供の世界」の住人としてとらえます。 時間軸の他に、作品中の「極」構造をとらえることによってその内容を切っ